日本工学院 日本工学院

Menu

高校生けんちくコンテスト

第11回 高校生けんちくコンテスト入賞作品発表。

高校生けんちくコンテスト高校生けんちくコンテスト

第11回 高校生けんちくコンテスト結果発表
応募テーマ「時間を楽しむ家」

(応募総数124作品)

【審査委員長】
渡辺真理(建築家/設計組織ADH代表/ 日本工学院 建築系学科 エグゼクティブアドバイザー)
【審査員】
岡本賢(建築家/元久米設計社長)
渡辺朋代(オートデスク株式会社 エデュケーションマネージャー)

受賞作品 ※受賞者の高等学校は受賞当時のものです

『国境を超える家
鈴木 巴菜
静岡県立浜松工業高等学校

国境を超える家

審査員コメント
時間を楽しむことと「ノマドワーカー」結びつけた発想が秀逸でした。ノマドワーカーこそが、今日の社会の中で自分の時間を楽しむことの確信犯かもしれないからです。2階には、ノマドワーカーの拠点(個室)が点在し、1階が「みんなの交流空間」になっていて、それぞれの拠点の周囲には、個を表現する棚が設けられていると言う空間構成にしても、無理のない配置とさりげない自己主張を許容する姿勢が巧みですし、魅力的です。棚が構造壁になっているという着想も専門家顔負けです。2階に行く階段が表現されていませんが、もしかしたらこの棚が階段になっているのではないかと深読みしてしまいました。(渡辺 真理氏)

『移ろう時を追う羅針盤』
植田 太陽
静岡県立天竜高等学校

審査員コメント
「時間を楽しむ家」というテーマに、真正⾯から取り組んだ姿勢をまず評価したい。時間にはさまざまな表情がある。⽇影の移り変わり、季節の移ろい、雲の移ろい、⽣活の中のさまざまな移ろい、仕事の時間、⾷事の時間、コミュニケーションの時間等々、時間のさまざまな局⾯を紡ぎだして、その各々に対する空間イメージを展開していっている。プレゼンテーションも丹念に作り込んでいて、このテーマを真摯に考えている事が強く感じられた。発想の豊かさとそれを具体的に表現できる⼒量も評価し、銀賞に値する作品である。(岡本 賢氏)

『とぅきをつらぬけ』
菅野 葵
福島県・私立福島成蹊高等学校

審査員コメント
作品名にあるとおり、⾃分の好きな時間を過ごす家として、楽しめる空間を表現⼒豊かに、かつエネルギッシュに表現しています。ご⾃⾝が楽しいと思うことを俯瞰と設定シーンに分けて、精緻なタッチとカラフルな⾊使いとユーモアを交えて仕上げています。まるで⼀緒におしゃべりをしているように感じるようなわくわく感が伝わってきます。(渡辺 朋代氏)

『影で感じる変化』
斎藤 直柔
京都府・京都市立京都工学院高等学校

審査員コメント
⽇時計を家の中⼼に据えて、その影を楽しみながら過ごす、時間の変化というテーマをうまく捉えた作品ですね。家に住む⼈々も詳細に設定され、また、その暮らしに適した部屋の配置も提案されており、住宅の⼨法まで詳細に設計されているところも素晴らしいです。3D化したモデルもぜひ⾒てみたいと思わせてくれます。(渡辺 朋代氏)

『カン』
大勢 里咲子
神奈川県・私立湘南白百合学園高等学校

審査員コメント
「時間」のカンから「土管(ドカン)」という連想は、語呂合わせのようでもありますが、土管を知らないはずの世代が「子供の頃の遊び心」の対象として土管を選んだことに驚きました。奥野健男の原風景の文章(『文学における原風景』)をどこかで読んだのでしょうか? 土管をモチーフにしたシリンダーの組み合わせに、「共感」「体感」「循環」と言う3つのカンを適合させた勘(カン)もなかなか達者で、コピーライターあるいはコンセプトメーカーの才能を感じました。 (渡辺 真理氏)

『ぐるぐるぐるぐるどっひゅ〜ん
~時間と共に走る家~』

中根 さくら
東京都立工芸高等学校

カン

審査員コメント
時間というテーマを⼀秒を争うスポーツと捉えて、スポーツをする奇妙な形態の家を提案している。何故この形態が家につながるのかは理解が難しいが、「ぐるぐるどっひゅ〜ん」というキャッチコピーとともに、不思議な魅⼒を感じさせる作品である。具体的な構成や位置付けに正当性は感じられないが、その奇想な発現と表現の上⼿さ、プレゼンテーションの明るさに審査員⼀同は銅賞に導かれていった。(岡本 賢氏)

autodeskロゴ

『移り変わる家 重なる物語』
廣田 菜都美
愛知県・国立豊田工業高等専門学校

審査員コメント
時間の経過とともに遷移していく暮らしのストーリーを可視化して、さまざまなビジネス分析も交えて、説得⼒のあるプレゼンテーションとしてうまく表現しています。家のデザインも⾊々なCADやソフトウェアを⽤いて、魅⼒ある美しいデザインに仕上がっている作品ですね。(渡辺 朋代氏)

審査員特別賞

『~遊び心~独身男の秘密基地』
田浦 健太
熊本県立球磨工業高等学校

審査員コメント
幅3m長さ15mの4階建て細長い住空間が1人暮らしの住まいになっていると言う設定が、ゲーム的かつ物語的で興味をそそられます。3mキューブが積層されたテトリスのような住まいには、どのような人が住むのでしょうか。箇条書きの設計要旨(例:玄関には大きい靴箱を2つ用意しました)も文学的で、宮沢賢治の物語を読んでいるときのように、作者の世界に引き込まれます。アクソノメトリックで計画案を表現するという発想も「レトロ未来的」(わかりますか?)で、それがかえって新鮮です。作者はリアルなCGでは表現できない夢の世界を表現しているからです。(渡辺 真理氏)

『余命600年』
廣井 春愛
京都府・京都市立京都工学院高等学校

審査員コメント
時間を寿命と捉え、さらにそれが建築の寿命と発想していたことに⼤変興味をそそられた。建材全てを時間の経過によって⾃然に還る、⼟に還ることをめざして600年先には朽ち果て、姿を消すというイメージに強く共感した。建築は時を経るにしたがって⾵雪に晒され、陽光をあびて⾃然の⾵味を増していく。特にヨーロッパの⽯造建築や⽇本の⽊造建築は、その状態が顕著に現れて⼈々に共感される。地球上に存在するものは全て寿命を持ち、朽ち果てるという発想は、⾼校⽣とは思えない⾼い精神性を感じた。(岡本 賢氏)

学校賞

埼玉県立鳩ケ谷高等学校
静岡県立駿河総合高等学校

東京都立工芸高等学校

渡辺真理 審査委員長 総評

2019年からコロナ禍のために中断されていた「高校生けんちくコンテスト」が再開しました。124点の応募作品の中から3名の審査員が10票ずつ投票し、3人が選んだ作品(「国境を越える家」)を金賞に、2名以上が選んだ10作品の中から銀賞2点と銅賞3点を決定しました。CG、フリーハンドのドローイング、模型写真(実物模型1点も含む)など、表現手段はさまざまですが、「時間」という普遍的な概念をテーマに力作が多く集まった中で、自分なりの視点、自分なりの表現手段を見つけた作品が光りました。審査した私たちにも、今の時代、これからの時代に求められる建築は何かを考えさせられた貴重な機会でした。

関連学科