近年の訪日外国人観光客の増加や、さまざまな観光スポットの開業などにより、現在、大都市のホテル稼働率はつねに高く、新しいホテルの開業ラッシュも続いています。特に訪日外国人数は、渡航費の安い航空会社(LCC)の増加や、円安、そしてビザ免除や緩和などの一連の措置により、中国、韓国、台湾、タイなどアジアからの観光客を中心に年々増え続けており、東京オリンピックの行われる2020年には、政府の掲げている訪日外国人目標の4000万人を上回ると言われているほど。
そんな中、ホテル業界はインターネットによって、ホテル選びから予約までのすべてがオンライン上で簡単に行えるようになり、さらにスマートフォン・タブレットの普及によって、よりスピーディーで質の高いサービスを求められる時代へと急速に変化してきました。今やホテルのさまざまな業務や運営を支えているのはITインフラやシステムと言っても過言ではありません。
そしてそのホテルを支えるシステムの根幹となっているのが「ホテル基幹システム(Property Management System:PMS)」です。
PMSとはいったいどういったシステムなのか、そしてこれからのホテルはITによってどのように進化していくのか。ホテル情報システムの開発からバックアップまでを手掛ける業界の最大手、株式会社タップ代表取締役会長 林悦男氏にお話を伺いました。
みなさんあまりご存じないでしょうが、実はホテル基幹システム(PMS)の元となるシステムは1964年の東京オリンピックの頃からホテルでは使われていました。はじめは予約などホテルの宿泊部門だけで使われていたものでしたが、その後、レストランや宴会の予約管理、顧客管理、POSシステム、管理会計など、ホテル運営・管理のためのすべての情報を集中して管理するシステムへと成長。銀行のコンピュータシステムと同様に、システムが止まったら業務すべてがストップしてしまう、ホテルにとっては重要なシステムで、今では大手ホテルではもちろん、リゾートホテルや旅館などほとんどの宿泊施設が利用しています。
PMSによるホテル業務一括管理イメージ
営業系システム
管理系システム
PMSを使用して行えるのは、ホテル業務の管理だけではありません。予約やチェックイン、清算、顧客情報の管理など、宿泊の運営を行うとともに、売り上げや顧客の動向、需要などのデータを元に、分析・シミュレーションを行うことで、さまざまなロスを防ぎ、よりよいサービスを生み、売り上げ向上につながる経営戦略を導き出すことが可能です。
さらに、今後はPMSをプラットフォームとして、スマホやロボットなどのさまざまな端末がPMSと連携。ホテルのIT化は加速します。スマホを使った生体認証や自動チェックイン、QRコード決済、スマホをルームキー代わりに使用するスマートロックなど、もうすでに一部で運用されているものも多く、ホテリエはつねに先を見て対応していかなければなりません。
しかし問題は、システムを使いこなし、データを分析して問題解決や生産性の向上を行える、ITスキル、ホテル経営スキルを持った人材が、ホテル内に不足しているという現状です。これからホテル業界で活躍する人材に強く求められるのは、「ホスピタリティ」+「ITスキル」。ホテルの現場では新しい形のホテリエ・ホテルエンジニアを必要としています。
株式会社タップでは、2020年4月に新設の日本工学院 情報ビジネス科 ホテルコースと連携。新しい時代のホテリエ・ホテルエンジニアの育成に力を注ぎます。タップシステムを授業に導入し、実際にホテルビジネスの現場で現役として活躍している講師による経験を元に、実践的に学ぶことのできる環境を用意します。大手ホテルを始め、さまざまなホテルがITスキルを持つホテリエを求めています。これからのホテル業界の先頭に立って活躍するのは、ITに強いホテリエ。みなさんにぜひ、情報ビジネス科 ホテルコースで学び、この夢のあるホテルの仕事にチャレンジしてもらいたい、そう思っています。
株式会社タップ
ホテル専門のソリューションプロバイダー。全国有名ホテル、リゾートホテル、旅館をユーザーに持ち、システム設計・開発はもちろん、経営・運営に関するコンサルティングや、ホテルシステム提案と総合的なコンサルティングを行っている。2020年4月に新設の日本工学院 情報ビジネス科 ホテルコースでは、タップのホテル基幹システムを授業に導入。テキストや講師派遣など、同社の協力によりさまざまな教育提携を行う。創業者で現在代表取締役会長の林悦男氏は日本工学院OBでもある。