憧れだけでなく山寺さんを倒すくらいの気持ちで ~より身近にルーツを探せ!!~
2024年12月1日、日本工学院専門学校(蒲田校)の片柳記念ホールで、山寺宏一さんによる特別講義『憧れだけでなく山寺さんを倒すくらいの気持ちで ~より身近にルーツを探せ!!~』が行われました。山寺さんの特別講義は、2021年以降4年連続の開催。業界の第一人者として若者たちの憧れを集める山寺宏一さんに対し、率直な質問をぶつけたり一緒にアフレコに挑戦することで、これから活躍していくための活力や学びを得ることが目的です。受講者は、本校クリエイターズカレッジの学生たち。山寺さんと親交の深い冨永みーな先生(声優/声優・演劇科講師)が司会進行役を務め、事前に学生たちから募集した質問に山寺さんが答える形式で行われました。
山寺 宏一さん
【プロフィール】
声優、俳優、タレント、ナレーター。アクロスエンタテインメント所属。宮城県塩竈市出身。 出演作は、〈アニメ〉『メガゾーン23』(中川真二役)、『それいけ!アンパンマン』(チーズ役、カバお役ほか)、『アラジン』(ジーニー役)、『新世紀エヴァンゲリオン』(加持リョウジ役)、『カウボーイビバップ』(スパイク・スピーゲル役)、『攻殻機動隊SAC』(トグサ役)、『かいけつゾロリ』(ゾロリ役)、『ルパン三世』(銭形警部[2代目]役)、『ドラゴンボール超』(ビルス役)、〈外画〉『マスク』(ジム・キャリー)、〈ゲーム〉『龍が如く4 伝説を継ぐもの』(秋山駿役)など多数。第38回ギャラクシー賞奨励賞(2000年)、第3回声優アワード富山敬賞(2009年)、ファミ通アワード2013キャラクターボイス賞(2013年)、第24回日本映画批評家大賞アニメーション声優賞(2015年)、第14回声優アワード外国映画・ドラマ賞(2020年)などの受賞歴がある。
冨永 みーな先生
【プロフィール】
声優。俳協(東京俳優生活協同組合)所属。広島県広島市出身。本校声優・演劇科講師。出演作は、〈アニメ〉『サザエさん』(磯野カツオ役)、『それいけ!アンパンマン』(ドキンちゃん役、ロールパンナ役ほか)、『機動警察パトレイバー』(泉野明役)、『北斗の拳』(リン役)、〈ナレーション〉『開運!なんでも鑑定団』など多数。
チャレンジコーナー「挑め!ヴォイスコミック」
冨永
ここからは、卒業生が在学中に作ったマンガ作品を題材に、学生と山寺さんにアフレコしていただくコーナーです。共演させていただくのは、本校声優・演劇科の学生たちです。
山寺
日本工学院の学生さんが作ったんですか。すごいですね。
冨永
ありがとうございます。最初は、小学館の『月刊コロコロコミック』の漫画賞で銀メダルを受賞した作品です。ダジャレを駆使したシェフが料理バトルに挑みます。今回は一部抜粋してお送りします。(学生の方を向いて)では、自己紹介をお願いします。
新野田
声優・演劇科2年の新野田梨沙です。私は山寺さんの声真似がすごく好きで、その中でもスマホのバイブ音が好きです。
山寺
(バイブ音の声真似)こういうの好き?そうですか。でもあれですよ、さっき始まる前に1回テストをやるだろうなと思ったら、ぶっつけ本番ということで。
冨永
山寺さん、学生が緊張しているので、これ以上プレシャーをかけないでください(笑)。それでは行きます。用意、アクション!
冨永
ありがとうございます。本来なら学生の感想や山寺さんのコメントもいただきたいところですが、時間の関係で次に進みたいと思います。
2作品目も、同じくマンガ・アニメーション科四年制卒業生の作品です。この方は在学中にデビュー&連載を達成したツワモノです。今回は3人の掛け合いを抜粋してお送りします。では、自己紹介をお願いします。
汐見
声優・演劇科2年の汐見梨沙と申します。山寺さんは七色の声をお持ちということで、そのすべてが唯一無二の声でとても尊敬しております。
山寺
ありがとうございます。
橋本
声優・演劇科2年の橋本亜香里です。山寺さんは一つひとつのキャラクターをとても大事に演じられていて、役者としてもとても尊敬しています。
山寺
ありがとうございます。
冨永
心の準備はOKですね。それではいきましょう。用意、アクション!
冨永
大塚
はい、声優・演劇科2年の大塚美優です。佐々木さんの役を演じさせていただきます。山寺さんの好きなところは、やっぱり人間力、存在が大好きです。
山寺
冨永
冨永
山寺
はい、オーディションを受けている気分でした。おもしろい作品ばかりで、やっていて楽しかったです。なにより共演者のみなさんが素晴らしかった(拍手)。
冨永
ありがとうございます。やってみてどうでしたか?
山寺
特におもしろかったのは『ゴリライフ』ですね。これは、ほとんどがゴリラのモノローグなんですよ。佐々木さん(学生が演じた役)と話しているのはほんの一部で、あとは全部モノローグ。どれがモノローグで、どれが台詞かを理解した上で、テンポを変えたりして演じ分けないといけない。モノローグだからって、ただ声をひそめればいいわけでもない。これってみなさんもプロになったらいっぱい経験すると思います。
冨永
ありがとうございます。そんなふうに言っていただいて。完成されたアニメ作品ばかり観るのではなく、アニメになっていないような原作を、声を出して読んでみるのも大事なんだって教えられましたね。
山寺
今日みたいに授業でマンガを取り上げて、何人かで組んでアフレコをやるのもいいと思います。テンポを自分たちで作れるし、その場の掛け合いでいろいろ変えられるから。ここは二人の台詞がかぶった方がおもしろいとか、得るものが多いと思いますよ。
冨永
ありがとうございます。次が最後のコーナーになります。「記念撮影争奪じゃんけん大会」です。実は今回のアンケートの中で最も希望が多かったものなんですよ。みんな山寺さんとツーショットを撮りたいんですね。じゃあ、みなさんスタンドアップ!
冨永
山寺さん、今日は本当にありがとうございました。アフレコの時も一コマの台詞を何倍にもして演じてくださったり、本当にお人柄が良くて、私は心から尊敬しているんです。これからも山寺さんのご活躍を楽しみにしています。
それでは最後に、これからこの業界を担っていくみなさんにメッセージをお願いいたします。
山寺
はい、今日はありがとうございました。僕の拙い話を一生懸命聞いていただき、じゃんけん大会でも盛り上がっていただいて、本当に良かったです。最初の方にお話しましたが、演技に正解はありません。いま、AIがクリエイティブの分野にどんどん浸食してきていて、僕が尊敬している音響ディレクターは、演技が上手か、声がいいか、そのどちらかしかないと。あとはAIに取って代わられる時代がくるかもしれないと言っています。特に映画の吹き替えなどは、例えばジム・キャリーの声を日本語に変換して誰かが芝居をすれば、それで成立してしまうかもしれません。
でも、僕は人間が生で演じることの素晴らしさを信じていますし、AIと共存すればもっとおもしろいエンタテインメントが生まれてくると思っています。コロナ禍で感じたのは、やっぱり人間はエンタテインメントがないと楽しく生きていけないということです。社会には何かを創り出す力が必要で、それを担っていくのはみなさんです。
「チャンスの神様は前髪しかない」と言われている通り、チャンスが来たらその時掴まないと逃してしまいます。過ぎ去ってから掴もうとしても手遅れです。大なり小なり誰にでもチャンスは訪れるので、チャンスを逃さないことが重要なんですが、僕はむしろそれを迎える準備をすることの方が大事だと思っています。
すなわち毎日一生懸命練習することが大事です。好きなことをやるためなら、それは全然苦労じゃない。この間、ポール・マッカートニー(元ビートルズ)の言葉を見ていたら「努力するより努力しない方が難しい」って。「音楽のために努力しないとか、そんなの無理。だってやるじゃん、当然だよ」っていう。あんな天才が言っているのを知って、自分ももっとやらなきゃいけないと痛感しました。
とにかくみなさんも好きな道を歩んでいこうと思うのなら、自分が納得するまでとことん突き進んでみてください。きっとチャンスが訪れると思います。ぜひがんばってくださいね。本日はどうもありがとうございました。
※講演の一部をテキスト用に再編集しています。