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ホテル・観光コース IT教育

星野リゾートと提携し、ITに強いホテル・観光人材を育成。

ホテル・観光コース IT教育ホテル・観光コース IT教育

星野リゾートと連携し、ITに強い観光人材を育成します。

日本工学院情報ビジネス科ホテル・観光コースでは、長年にわたって蓄積してきた日本工学院のIT教育のノウハウと、星野リゾートのITに対する考え方を統合。AIシステム科と共同授業を行ったり、星野リゾートのスタッフが講義をするなど、独自のIT教育を展開しています。指導するのは、ホテルの現場とITを熟知したプロフェッショナルたち。日本工学院と星野リゾートの長所を生かし、ITに強い観光人材を育成しています。

星野リゾートの考えをIT教育に導入

星野リゾートのスタッフが、IT関連の授業を担当。

ホテル・観光業界の中で、いち早くITの活用やDXに取り組んできた星野リゾート。IT戦略を推進する情報システムグループを中心に、新たなホテルシステムの構築や「全社員IT人材化」など、独自の取組みを行っています。星野リゾートが教育をプロデュースしている日本工学院情報ビジネス科ホテル・観光コースでは、星野リゾートの考えをIT教育にも導入。ホテル観光業界の現状を踏まえた実践的な教育を行っています。

日本工学院x星野リゾートコラボ

星野リゾート 久本英司さん講義&インタビュー

2022年1月、星野リゾートのIT部門責任者である久本英司さんの講義が行われました。後日、授業内容をふまえ、星野リゾートの取組みや学生たちが身につけるべきITスキルなどについてうかがいました。

これからのホテル・観光業界に
必要なのは、ITを活用できる人。

久本 英司 さん

(株)星野リゾート 情報システムグループ グループディレクター

久本さん

IT系企業で活躍後、2002年、軽井沢移住をきっかけに(株)星野リゾート入社。ホテル管理システムや会計システムなど基幹システムの開発・導入から、ネットワーク・インフラ、予約や勤怠管理などのアプリケーションの企画・設計・開発まで行う。約60名のエンジニアが所属する情報システムグループのディレクターとして、星野リゾートグループのITを統括。

▶︎ホテルとIT(星野リゾートの取組み)

ホテル事業のカスタマージャーニー


魅力発信→予約→滞在まで、お客様の体験を一つにつなげたい。

ホテル事業とは、場所と人(ホテルスタッフ)を用意し、コンセプトをまとめて魅力をつくり、お客様に満足してもらえるように運営する仕事です。それをお客様の流れにフォーカスしてまとめたのが下の図です。

ホテルを利用されるお客様は、楽天トラベルやトリップアドバイザーなどのOTA(オンライン・トラベル・エージェント:インターネットのみで取り引きを行う旅行会社)などで価格を比較し、旅行先や旅行時期を決めています。その場合、実際のホテルの価値よりも価格を優先しがちになるため、私たちは予約以前の段階からホテルの魅力を訴求する取組みを続けてきました。地域ごとに現場スタッフが魅力をつくり上げ、プロモーションという形で世の中に発信し、メディアを通して潜在的なお客様と魅力を共有してきました。その結果、現在では自社ホームページからの予約率は60〜80%に達しています。一般的なホテルは10%未満なので、自社比率はかなり高い方です。

また、予約を取るまでは世界中の予約サイトが対応できますが、滞在後に現地でサービスを提供できるのは私たちだけです。一人ひとりのホテルスタッフがお客様に満足していただけるサービスを提供し、お客様の声を聴いてサービスを改善し、それが評価や評判に繋がり、リピーターや新たなお客様の獲得につながっていく―。魅力の発信から自社システムを中心とした予約を経て、そこにつなげていくのが私たちの目標であり、そのために現在新たな挑戦を進めています。

システムイノベーション


観光事業の可能性を追求し、新たなシステムの構築に取り組んでいます。

新たな挑戦とは、システムのイノベーションです。実は、予約を管理するシステムと滞在を管理するシステム(PMS)は別々に進化してきたという歴史的背景があり、現在も分断されています。予約を担う会社と滞在を担うホテルがそれぞれ異なるシステムを使っているのです。ホテルが予約と滞在の両方を担う場合でも、別々のシステムを使っています。このことは顧客サービスに大きな影響を及ぼしています。例えば、現在の予約システムでは、お客様が予約後に自由自在に予約内容を変えることはできません。オンラインで生命保険に加入する際などは比較的簡単に変更できるのに、ホテルだとそれができないのは、システムが分断されているからなのです。

私たちは、システムの分断を解消していきたいと考えています。予約システムとPMSの機能を統合するだけでなく、旅を楽しくするためのイノベーションに本気で取り組んでいきたいと考えています。

全社員IT人材化


一人ひとりがITを活用し、より良いサービスを実現するプロジェクト。

 ホテル運営の基盤となるシステムの再構築とともに、私たちが力を入れているのが「全社員IT人材化」です。全社員がIT人材化することで新システムを最大限に活用しようというビジョンのもと、長期的な視点に立って進めているプロジェクトです。新しいシステムは、改善しやすく、活用しやすい仕組みになるため、ローコード・ノーコードツール(プログラミング言語をほとんど使わずにビジュアル操作などでアプリケーションを開発するツール)を使えるようになれば、誰でもシステムを活用して業務を改善することができます。まだ始まったばかりのプロジェクトですが、ローコード・ノーコードツールによるアプリケーション開発は、徐々に社内に広まっています。

社内におけるITの活用例の一つに、温泉施設混雑可視化サービス「温泉IoT」があります。これは、コロナ禍の中、密閉・密集・密接の三密を回避するために生まれたWebアプリケーションです。大浴場の入口にIoTデバイス(距離センサー)を設置し、リアルタイムで算出された混雑度を、お客様がスマートフォンで確認することができます。情報システムグループがアイディアを出し、現場のスタッフと協力して作りました。全社員IT人材化が進めば、ITを活用したさまざまなサービスが実現できるようになるでしょう。

DXの取組み


私たちにとってDXは目的ではなく、お客様の満足度を高めるための手段です。

 DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術によって人々の生活をより良いものに変化させるという概念です。近年、あらゆる産業でDXへの取組みが求められていますが、私たち星野リゾートは何十年も前からそれと意識せずにDXに取り組んできました。経済産業省DXの定義(下図)をご覧ください。私たちは競争力を高めるため、独自の運営を行ってきました。スタッフがマルチタスクで働いたり、現場のスタッフがホテルの魅力を創造したり、自社チャンネルを強化してきました。企業文化も今でこそフラットな組織文化ですが、長い年月をかけて変革してきたのです。だから、ITを活用した現在の取組みも、DXだからやろうというのではなく、お客様の満足度を高める手段として必要だからやっています。

その上で、私たちはデジタル技術を使って、新たなホテルシステムはどうあるべきかを問うていきたいと思っています。いま以上の価値を提供するために、システムもオペレーションのあり方も全部見直し、お客様が本当に望んでいる顧客体験を提供したいと考えています。そのために必要なのがシステムの再構築であり、全社員IT人材化です。私たちはグローバルホテルチェーンに比べれば小さな存在ですが、独自の取組みで競争上の優位性を持てるよう一生懸命取り組んでいます。

■星野リゾートのDXの捉え方

▶︎観光人材とIT教育

ITを学ぶ意義


IT活用スキルは、ホテル業界に限らず、これからあらゆる業界で必要とされると思います。

これまで「IT人材」とは、IT企業や事業会社の情報システム部門などに所属している人を指していました。ところが『DX白書2021』では、ITを活用する人もIT人材に含まれています。これからは、プログラミング言語を知らなくても、ITを使って価値を生み出せれば「IT人材」なのです。

一方、同白書ではIT人材が約30万人不足していると指摘しています。これまではエンジニア不足が問題でしたが、これからはIT活用人材の不足が問題になっていきます。あまりにも人材が足りないので、ローコード・ノーコードツールがどんどん発展していくでしょう。いまのうちからITで課題を解決できるスキルを身につけておけば、将来の活躍の場が広がります。

特にホテル業界は世界的に見ても生産性が低く、IT化が遅れている業界なので、活躍できる余地はたくさんあります。ITを活用して顧客価値を磨いたり、生産性を高めていければ、業界を変えていくリーダーになれるかもしれません。ホテルがいま提供できている顧客体験は、大きな可能性の中のごく一部にすぎないので、自分たちの手で新たな顧客体験を開拓していけるのも大きな魅力だと思います。

身につけるべきスキル


課題解決にITをどう活用できるのか。そのセンスをぜひ養っておいてください。

まず、チェックインとは何か、お金をいただくとはどういうことかなど、抽象的な概念として捉え、本質を理解することが大事です。学生時代に考える癖をつけておくと、社会人になったときに大きな違いが出ます。それに加え、ITを学ぶ前提として、ITとは何かを正しく理解しておくことが大切です。ITの根幹の技術は昔から何も変わっていないので、ITのベースとなる仕組みを知っておけば、あとは応用するだけで使い方も広がっていきます。

そして、なによりも重要なことは、プログラミングすることではなく、ITの使い方がわかっていることです。ITユーザーとしてではなく、自分の仕事にITを組み入れて考えられることが大事です。日常生活では普通にスマートフォンなどのITツールを使いこなしていても、仕事で使うとなると身構えてしまう人が多いようです。仕事でもITを使いこなせれば、いろんな魅力を作ったり、業務をより便利に改善したり、お客様にいろんな価値を提供することも可能になります。将来に備え、課題解決のためにITをどう活用できるのかというセンスは学生時代に磨いておいた方がいいです。

ITをどう活用すればよいかがわかれば、あとはエンジニアにシステムやアプリケーションを実装してもらうだけです。課題解決には大勢で取り組むので、課題を見つける力、課題を解決する道筋を作る力、エンジニアたちと一緒に解決する力などを長期的に養ってほしいと思います。

ホテル・観光業界をめざすみなさんへ

日本の観光業は、世界一になるポテンシャルを秘めた魅力的な産業です。

私たちは、観光業は日本の基幹産業になり得る産業だと思っています。日本にはたくさんの観光資源があり、その資源を活用して魅力をしっかり発信していけば、世界に通用する産業になり得ると思っています。にもかかわらず、産業自体のビジネスプロセス(お客様にサービスを提供するまでの業務の流れ)がまだ成熟していないので、観光資源を十分に生かし切れていないのです。逆の見方をすると、ITを活用してビジネスプロセスを進化させれば、生産性が大きく向上し、世界の観光業の中で日本がナンバーワンになる可能性を秘めています。こんなに魅力的な産業はそうそうありません。やりがいの大きい産業ですので、興味のある人はぜひチャレンジしてみてください。

授業紹介

■ホテルIT経営

ITを活用してホテルを効率的に経営する方法を学びます。

ホテルは24時間体制で運営しなければなりません。業務も多岐にわたります。そのため、業務を効率化するには、全体の業務の流れを把握した上で、人間が行う部分とテクノロジーに任せる部分を明確に分ける必要があります。その方法を学ぶのがこの授業です。業務フロー(仕事のプロセスをわかりやすく示した流れ図)を作る力を養い、どのプロセスを改善するべきか、ITをどのように活用していくのかを実践的に学んでいきます。

ホテルIT経営

■業務フロー

一つひとつの業務の流れ図の作り方を実習します。

ホテルでは、さまざまな仕事が同時に進行しています。自動車業界における多能工(一人で複数の作業や工程を行うこと)のように、ホテル業界でも複数の仕事を兼務することは珍しくなく、実際に星野リゾートでは一人の社員がフロント、調理、食事提供などをすべてこなす「マルチタスク」で働いています。この授業では、客室清掃など一つひとつの業務をワークフロー図にして可視化するスキルを養成します。

業務フロー

AIシステム科とのコラボレーション

ホテルの仕事にITをどう活用できるか、共同で研究中。

ホテル・観光コースでは、AIシステム科と連携し、ホテルの問題解決にITを活用する取組みを行っています。例えば、ドアスタッフがホテルの利用客一人ひとりに適した声かけができるよう、入館時に撮影した顔写真に宿泊目的などの属性をひも付け、ドアスタッフが装着するメガネ(ウェアラブル端末)にその情報が表示されるシステムを学生たちが考案。より良いサービスを実現するためにはITをどう活用すればいいのかを一緒に追究しています。

AIシステム科とのコラボ