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Vol.4 IT業界はなぜ資格を重要視するのか?(前編)

IT系資格対策の第一人者 大滝みや子先生が語るIT業界が資格を重要視するワケ。

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日本工学院八王子専門学校で、かれこれ十数年にわたってITを教えてきた大滝みや子先生。学内ではクラス担任でありながら、学外では”合格の女神様”として試験対策の分野ではつとに有名な存在です。そんな大滝先生が語る「資格論」には、資格取得のコツのみならず、日常生活をどう送るべきかが示されています。かつてIT業界でプロジェクトリーダーを務めた先生が解く、小手先ではない「現場感覚の資格論」とは───。
将来、IT業界に就職したい人、ITの資格取得をめざす人が抱く疑問にすべて答えていただきました。

もくじ

プロフィール

IT企業で地球科学分野を中心としたソフトウェア開発に従事した後、日本工学院八王子専門学校の教員に。現在、ITスペシャリスト科システム専攻のクラス担任を務め、C言語、データベース、情報理論、および情報処理技術者試験などの資格対策科目を担当。平成10年(1998年)より試験対策テキストの執筆を始め、そのわかりやすさと合格率の高さから、学研の試験対策誌『月刊 合格情報処理』(現在休刊中)で、「合格の女神様」と称されるようになった。大滝先生のクラスでもこれまで延べ200名以上が情報処理技術者試験に合格。その合格率は全国平均を大きく上回り、数多くの卒業生が資格を手にIT業界で活躍中。「応用情報技術者 合格教本」「応用情報技術者 試験によくでる問題集【午前】」「要点早わかり 応用情報技術者 ポケット攻略本」(以上、技術評論社)「基本情報技術者 スピードアンサー338」(翔泳社)「基本情報技術者 かんたんアルゴリズム解法―流れ図と擬似言語」(リックテレコム)「基本情報技術者 午前の集中学習」「基本情報技術者 午後の集中学習」(以上,オーム社)「基本情報 SQLドリル」「基本情報+ITパスポート 計算ドリル」(以上、実教出版)ほかこれまでの著作は70 冊以上。 好きなアーティストは、フレディ・マーキュリー(Queen)、マイケル・ジャクソン、キミ・ライコネン(F1ドライバー)。趣味は、海外旅行とF1観戦。

第4回

IT企業はなぜ資格を重要視するのか?(前編)

── はじめに

過日、八王子キャンパスで行われた「オープンキャンパス+体験入学」にて、大滝みや子先生によるITセミナー『IT企業はなぜ資格を重要視するのか』が開催されました。当日は、IT企業の人事採用担当者を講師に招き、企業の本音をあますところなくレクチャー。大滝先生のクラスの学生たちに加え、ITカレッジへの入学を考えている現役高校生も参加し、講義の後は質疑応答も行われました。盛況のうちに終えた当日の模様を、今回と次回にわたってレポートします。

大滝:みなさん、こんにちは。今日は日立INSソフトウェア株式会社の人事担当の方がお見えになっています。充分に得るものがあると思いますので、しっかり話を聞いてくださいね。では二宮さん、よろしくお願いします。

二宮:日立INSの二宮と申します。人事採用を担当しています。大滝先生からお話をいただいてまいりました。今日は資格にフォーカスを当て、企業の視点で私たちが考えていること、また社内の教育担当として日頃感じていることなどをお話したいと思います。

大滝先生のネットワーク

IT企業に幅広いネットワークを持ち、企業の信頼も厚い大滝先生

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日立INSソフトウェア株式会社
人事総務部 人事教育グループ 部長代理
二宮 康二さん

── 日立INSソフトウェア(株)とは?

「お客様と次の時代へ」をスローガンに

二宮:本日のテーマは”IT企業はなぜ資格を重要視するのか”ということですが、まずIT企業とは何かを知っていただくために、当社の概要からお話します。企業は、いろんな人がいろんな思いで組織体として課題に取り組み、大きな目的を達成します。そのためにさまざまな計画を立てますが、一番重要なのは経営者が何を目標に企業活動を推進していくかということです。これを”コーポレート・スローガン”といいます。当社の場合は”Sail up to the Next お客様と次の時代へ”。ポイントは「お客様と」という点です。当社だけで会社が大きくなれるかというとそうではなくて、人と人、企業と企業がつながり合って成長していくものだと思っています。このスローガンには”お客様と一緒に成長していこう”という当社の思いが込められています。

32万人を擁する日立グループの一員として

二宮:みなさんは日立グルーブって何人いるか知っていますか。(5万人、10万人と声が上がる中で)実は約32万人います。中規模都市の人口に匹敵する数です。その中で、当社の社員数は867名。これはスピード感を持って動ける適度な規模だと思っています。売上高は2012年度実績で126億円/年です。関連会社が沖縄県と東京都・人形町にあり、一緒に成長していく仲間として、連携しながら仕事を推進しています。

事業の約8割がSI(システムインテグレーション)

二宮:当社では、SIを中心としたシステム開発、ソリューションサービス事業及び、プロダクト&サービス、開発支援事業に取り組んでいます。事業別売上で見るとSIが多く、全体の約80%を占めています。ところで、みなさん、SIってわかりますか。わかりやすく言うと、オーダーメイドで服を作るようなものです。例えば小売業者が同じ型の既製服を大量生産して消費者に販売するのとは異なり、スーツであればお客様にどんなサイズがいいですか、ポケットの形はどんなものがいいですか、袖の長さはどの程度がいいですかというように、オーダーメイドで作るのがSIだとイメージしてください。特にテレコムや公共系のシステムに関して、お客様のご要望に合わせてプログラムを開発し、システムを構築していくことが私たちの役割です。

── 資格取得への取り組み

基本情報技術者試験の合格は必須

二宮:ここからが本題です。私たちが資格についてどう考えているかというと、実は就職が内定した段階からITエンジニアのプロにする取り組み(=資格取得)を強力に推進しています。具体的には、内定者には基本情報技術者試験を中心にITの基礎を身につけてもらいます。ITパスポート試験も大切ですが、IT企業で働く上で最低限必要なのは基本情報技術者試験の方だと思っています。実際、2013年は約7割の方々が在学中に取得して入社してきました。その支援策として、私たちは内定期間中から小テストや模擬試験、希望者には集合教育などを行っています。
もし入社前に基本情報技術者試験に合格していなくても心配は要りません。全員が入社後1年以内に合格することを目標に掲げ、対策を講じています。当社では新人技術教育を約2ヵ月間行っていますが、その期間中に対策講座を実施しています。ちなみに、この対策講座では午後の問題しか行いません。午前問題は内定期間中に覚えてきてくださいね、ということです。
また、社員のキャリアプランでも資格を目標の一つに位置づけています。一人ひとりのキャリアに応じてスキル目標を立てますが、併せて次に何の資格を取得するかについて会社と合意し、会社はそれに対して支援します。そして、合格した場合はインセンティブとして情報処理技術者試験の高度試験なら最大20万円を合格時に支給しています。また、合否にかかわらず、資格対策本の費用も会社が半分を負担しています。私たちは営利を追求する一方で、お金をかけて社員の資格取得をプロのエンジニアの育成施策として支援しているのです。

ITスキル標準(ITSS)を導入

二宮:次に、職種に応じてどんな資格を取ればいいのかということですが、ITSSって知っていますか? これは「ITスキル標準」というもので、業務に必要な知識をそれぞれの職種に分類して整理したものです。専門分野ごとにレベルが分かれていて、これに資格を対応させたものがこちらの表です(当社のキャリアパス)。例えばITアーキテクトのアプリケーション関連業務を目指すなら、情報セキュリティスペシャリスト以上の資格が必要だと一目でわかります。先ほどリーダーをめざす上で資格取得目標を立てる必要があると申しましたが、この表は一つの指標となるものです。ここに書かれてある情報処理技術者試験だけでなく、Javaやオラクルといったベンダー系の資格も目標資格に含まれます。

ITスキル標準

V3 2008 キャリアフレームワーク

資格は昇格の重要な要件

二宮:昇格の要件についても資格が関係してきます。当社では、入社後1~4年目までの一人前のプロになるための期間を「トレーニー」と呼んでいます。その後、「プロフェッショナルスタッフ」→「プロフェッショナルリーダー」→「マネジリアルスペシャリスト」または「スペシャリスト」と昇格していきます。それぞれ役割は異なり、例えばプロフェッショナルスタッフなら”プロジェクトの成果につながる業務を遂行する職務”を担います。マネジリアルスペシャリストになると、マネジメントを中心とした仕事になりますが、”専門的な課題を解決する能力”や”事業への貢献”も求められます。スペシャリストには”高度な技術や特定の専門知識を生かして事業に貢献すること”が求められます。
これに資格がどう関係しているかというと、まずトレーニーからプロフェッショナルスタッフになるには基本情報技術者試験の合格が必須となります。もしくは、ITSSレベル2以上の資格取得が必須です。要件を満たせなければ、プロフェッショナルスタッフにはなれません。つまり、昇格するには相応の知識が求められる、ということです。加えて、自分の成果を論文にまとめ、経営幹部の前で発表することも要件に含まれます。

ITスキル標準
── 資格の位置づけと考え方

なぜ資格取得を支援するのか

二宮:ここで、当社における資格の位置づけと考え方についてお話します。当社が資格取得をすすめる理由は次の4つにまとめることができます。

厳しい競争を勝ち抜くために。みなさんは国内の需要がかなり厳しくなってきている実態をご存知ですか。仕事はグローバル化していて、海外に進出している企業もたくさんいます。その中で生き延びるには、強みを持つことが不可欠です。
専門性の高い優秀者を採用するために。みなさんが在学中に資格を取得すると、私たちはその努力や成果を見ることができます。採用期間は以前と比べて2ヵ月短くなっていますが、それは私たちの選考期間も2ヵ月短くなったことを意味しています。その中でどのように優秀者を見極めるかといえば、やはり資格が大きな判断基準の1つになります。
公正で透明性の高い評価(昇格・昇級)のために。社内でプロフェッショナルに昇格するためには、先ほど述べた職務を果たさなければなりません。特にSE(システムエンジニア)の業務は千差万別です。したがって、画一的な評価は非常に困難です。その点、資格は客観的に個々の努力を評価する基準になります。
全社で一体となった人財育成のために。当社はものづくりの会社です。従って、人財育成は当社にとって最大のテーマです。でも、自発的に学ぶことってすごくたいへんですよね。その意味で、学んだり、教えたりする風土が会社にあったら学ぶ意欲も高まります。資格はそのような学ぶ風土作りのためにも有効だと、私たちは思っています。

もちろん、資格は単に知識を習得するためだけに有効なわけではありません。事業を進めるため、優秀者を採用するため、人を育成するため、いろんな観点で有効だと考えています。だからこそ私たちは社員一人ひとりに投資しているのです。

資格は強みになる

二宮:では、4つの理由をさらに掘り下げてみます。まず、他社との競争を勝ち抜くために、についてです。そもそも事業への貢献度とは何かということですが、お客様からより多く仕事をもらうこと、すなわち受注を増やすことが貢献度に直結します。この点において、お客様から受注に際して当社の資格取得者等を求められることがあります。もちろん資格さえあればというものではなく、その他の実績を含め考慮されますが、特に高度な資格の取得者数は当社の実力を示す要素であり、事業推進の上で大きな強みの一つになります。
また、事業がグローバル化し競争が激しくなる中で技術者の能力を客観的に評価するニーズが高まっており、ITSSのレベルに合った資格を取得することが自社(自分)の実力をアピールする材料になります。国内では情報処理技術者試験を、海外ではCompTIA等を注目しています。

資格取得をすすめる理由

資格が及ぼすさまざまな効果

二宮:みなさんの中には、本当に資格は仕事に使えるの? ITプロとして資格は本当に必要なの? と疑う方がいるかもしれません。もちろん、資格があるからといって即実践で使えるわけではありません。それはスポーツと一緒です。打撃理論の知識があるからといって実際にホームランを打てるとは限りませんよね。でも、体系的、網羅的な知識が頭の片隅にあれば、実際の開発作業で壁にぶつかった際、それを乗り越える力になります。
また、お客様との会話にも有効です。経験を補うことができるからです。お客様から見たらどんなに若い社員でもプロと映ります。その際、「こんなこと知っている?」と聞かれるケースがあります。資格の勉強をしておくと、実際の経験がなくても「知っています」と答えることができます。コツやカン、度胸も必要になりますけれどね。
もちろん、資格を仕事に生かす努力も必要です。最近の若い人を見て感じるのですが、「悩むこと=考えること」と思っている人がいます。例えるなら、お腹が痛くなった時、お腹が痛くなってしまったことを悩んじゃっている人がいる。そうではなくて、なぜそうなったのかを考えるべきなのです。悩むのではなく、具体的に問題を考え、その問題に対し行動することが大事なのです。お客様から何か言われたときに、課題は何なのかを考えることがとても重要です。

説明する二宮さん

プロジェクターを駆使してわかりやすく説明する二宮さん

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