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CG映像科 (3年制) NEWS & TOPICS

CG映像分野のクリエイターを育成するCG映像専門学校。

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2024年06月05日
八王子校

白組3DCGディレクターの髙橋正紀氏による特別講義

白組3DCGディレクターの髙橋正紀氏による特別講義

CG/VFXのプロをめざすなら、
学生時代のすべてを映像制作に捧げてください。

2024年4月24日(水)、日本工学院八王子専門学校で、CG映像科の一年生を対象に、株式会社白組の3DCGディレクターとして『ゴジラ-1.0』など数多くのヒット作を手がけてきた髙橋正紀氏による特別講義が行われました。CG/VFX業界をめざす若者に向けて、白組の説明からはじまり、VFX技術の解説やプロをめざすうえでのアドバイスなど、今後の学習の指針となる貴重なお話をしていただきました。

白組との教育連携

学生による『ゴジラ-1.0』への制作協力や特別講義の実施など、さまざまな連携を進めています。

日本工学院×白組

日本工学院CG映像科では、白組出身の教員が学生たちに実践的な指導を行っているほか、白組から現役クリエイターを招いて度々特別講義を行うなど、白組との教育連携を推進しています。
2022年には、同社からの依頼により、2名の学生(当時)が『ゴジラ-1.0』に制作アシスタントとして参加。群衆の人物などのセットアップ(人物のモデルに骨を入れて、動く仕組みを作る)アシスト作業を行いました。エンドロールに制作協力として本校名と学生たちの名前が掲載され、参加した学生が「人生で一番ハードで充実した経験でした」と話すほど、学生たちにとっても貴重な経験になりました。

『ゴジラ-1.0』にCG映像科の学生が制作協力 

第一部 白組について

コンセプトと仕事内容

最先端と伝統技術をかけ合わせ、多彩なジャンルの映像作品を制作しています。

株式会社白組は、1974年の設立から今年で50周年を迎えた、業界でも老舗の映像制作プロダクションです。世田谷区三軒茶屋に本社があり、社員、契約社員、フリーランスの方を含め、常時約250名が活動しています。最先端と伝統技術をかけ合わせ、ハンドクラフト精神が生きた本物の映像を追求することを旗印(コンセプト)にしています。ジャンルにこだわらず、長編映画(3DCGアニメ、実写VFX)、ゲームムービー(バッケージ、ソーシャル)、テレビ&ネット配信アニメ、ミュージック・ビデオ、東京モーターショーなどのイベント映像、TVコマーシャルなど、さまざまな映像作品を制作しています。

近年の主な作品

〈映画〉『ゴジラ-1.0』(2023)、『しん次元!クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』(2023)、『シン・仮面ライダー』(2023)、『GHOSTBOOK おばけずかん』(2022)、『シン・ウルトラマン』(2022)
〈ゲーム〉『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』、『SILENT HILL f』
〈アニメ〉『アイドルマスター ミリオンライブ!』、『revisions リヴィジョンズ』
〈その他〉西武園ゆうえんち『ゴジラ・ザ・ライド 大怪獣頂上決戦』
ほか多数

制作の特色

ジャンルや媒体を問わず、常に新しいことに挑戦し続けるスタイル。

本社以外に東京都調布市にスタジオがあり、全部で6つの制作チームが分担してさまざまな映像作品を制作しています。作品のジャンルや媒体にこだわらず、どんな仕事にもおもしろさを見いだし、常に新しいことに挑戦し続けるスタイルの会社です。

私は調布スタジオにある制作部の部長を任されており、『ゴジラ-1.0』などのオリジナルVFX映画やCMを制作しています。調布スタジオはスタッフエリアが広く、フロアの中央に通路があり、両側の壁にモニターが設置されているので、通路を歩けば、それぞれのスタッフが何の作業をしているかが一目瞭然です。なお、制作の進め方はチームによって異なるのですが、私たちのチームは基本的にミーティングを行いません。常日頃からお互いに話していればミーティングは必要ないと考えているからです。その代わりに、普段気軽に話せるスペースとしてカウンターキッチンを設け、毎日楽しく仕事をしています。

髙橋正紀氏による講義風景

第二部 VFXと『ゴジラ-1.0』

VFX技術

一つの技術にこだわらず、好きなことを追究してみてください。

みなさんの中には「CGをやりたい」という人もいれば、「VFXを学びたい」「セルシェーディングを極めたい」など、いろいろな方がいると思います。(資料を示しながら)VFX一つ取っても、これだけの技術が関連しています。細分化しようと思えば、もっと細かく分類することも可能です。実際、海外ではどんどん細分化・専門化が進んでいますし、日本でも特定の専門技術で勝負する制作会社が増えています。みなさんも、将来はこの中の何かの技術を修得して働くことになるでしょう。

VFX技術

●CG(モデリング、アニメーション、ライティング、レンダリング)●テクスチャー ●コンポジット ●リギング ●グリーンバック撮影 ●マット画 ●3Dスキャン ●HDRI撮影 ●モーションキャプチャー ●フェイスキャプチャー ●物理シミュレーション ●カラーマネジメント ●編集 ●プログラミング ●グレーディング ●セット美術 ●ミニチュア ●プレヴィズ ●バレ消し ●2Dグラフィック ●キャラクター・デザイン ●背景デザイン ●3Dトラッキング etc

一方で、クリエイターの職域の境界線がどんどん曖昧になってきているのも事実です。私たちは「Nuke」というソフトを使ってコンポジット(実写合成)を行っていますが、このソフトはHDRI(現実世界に近い明るさを表現できる画像)の補正などにも使用できます。ソフトの機能が相互にどんどん重なってきていて、「僕はコンポジットしかできません」「モデルしか作れません」ということが通用しにくくなっているのです。もちろん、専門職の仕事は今後も残ると思いますが、ソフトがどんどん良くなってきているので、やりたいことがあるなら一つの技術にこだわらず、いろいろなことを学んでみてください。私たちの会社も、一つのスキルで終わらないジェネラリストを求めています。

髙橋正紀氏による講義風景

『ゴジラ-1.0』制作の舞台裏

さまざまな技術と多くの労力が、優れた映像を支えています。

私たちが手がけた『ゴジラ-1.0』は、日本工学院の先生や学生さんにも制作協力をいただき、おかげさまで国内外で大好評を博しました。特にVFXに対する評価が高く、「第96回アカデミー賞®視覚効果部門」を受賞しました。その背景にある私たちのこだわりをいくつかご紹介しますので、みなさんの作品づくりの参考にしてください。

まず、ゴジラが銀座に登場するシーン。ここで大事にしたことは、しっかりと時代考証をするということです。当時(戦争直後)の銀座は、どこにどんな建物があったのか。映画を観る人の多くは当時のことを知らないので、想像で作ってもいいのですが、ちゃんと検証してその通りに作ると、なぜか説得力が生まれるんです。「リアル」を表現するなら、その積み重ねがとても重要になってきます。みなさんもこれから何らかのキャラクターを作ることがあるかもしれませんが、キャラ設定はしっかり行ってください。架空のものを作る場合でもそれは一緒で、設定をしっかりしないと世界観がブレてしまうので注意してください。

講演する髙橋正紀氏

ゴジラが建物を壊すシーンなどには、「Houdini」というシミュレーションソフトを使っています。日本工学院のカリキュラムにもこのソフトを使う実習があるそうですね。「Houdini」は、今後どんどん需要が増えると思います。でも、修得が難しく、私たちのチームで「Houdini」を操るスーパーアーティストに聞いてみたら、マニュアルを見ずにアイデアをカタチにできるようになるまで3年はかかると言っていました。だから、みなさんもやってみたいと思ったら明日からでも始めてください。そうすれば、卒業までに上手くなれるかもしれません。

講演する髙橋正紀氏

ゴジラが海を泳ぐシーンは特に評価が高く、水(波)の表現が海外などで絶賛されています。もちろん、水も素晴らしいのですが、ゴジラの質感が圧倒的に優れていることもこのシーンが評価されている一因だと思っています。ゴジラのモデルはチームのトップモデラーが作っているのですが、映像の完成度が高いため、全部CGで作っていると言うと海外のクリエイターたちはみんなびっくりします。セットを作って撮影したものを合成したんじゃないかと思われているんですね。このように、優れた映像は一つの技術だけでできているのではないということを理解し、一つひとつの技術の修得に励んでほしいと思います。

第三部 学生時代にやっておくべきこと

個人で取り組むこと

難しい作品に挑戦し、必ず完成させてください。

●モデラーをめざす人

キャラクターも背景も同じですが、必ず難しいものを作ってください。身の丈に合ったもの(自分のできる範囲のもの)を作っても伸びません。一人で考えて何かを作ってみても、必ず身の丈に合ったものを作ることになってしまうので、最初はハリウッドの作品など、自分が目指す最高のものを真似してください。たいへんですが、それ以外に上手くなるコツがないので、ぜひがんばってみてください。

●アニメーターをめざす人

大事なのは、なるべくリファレンス(アニメーションを作るときの参考に使う動画)を実写で撮影することです。難しければ、TikTokなどで好きな踊りを探して題材にしてもかまいません。それを完全トレース(模倣)してください。シルエットだけをトレースするのではなく、肘が内側に何ミリ入っているのか、肩が何ミリ上がっているかまで注意深く観察し、すべてのコマをきれいにトレースすれば、必ず大きな差がついてきます。

●ジェネラリストをめざす人

映像監督やディレクターなどのジェネラリストをめざすなら、なんでも自分でやってみることが大切です。いろんな作品に挑戦し、特に学生時代に作品を完成させておくことが重要です。就職活動で自分をアピールする際、作品がないと評価されるのは難しいと思います。

チームで制作する場合

コミュニケーション能力(特に聞く力)を養ってください。

学生時代にチームで作品を作る経験をしておくことはとても大切です。最初は個性がぶつかり、うまくいかないことがあるかもしれません。でも、会社の仕事はすべてチームワークです。学生時代にそれを経験できるのは貴重なことなので、仲間たちと一緒にオリジナル作品を作る機会があれば、ぜひ参加してほしいと思います。

制作の仕事には技術だけでなく、それを伝えるコミュニケーション能力も重要です。学生時代にチーム制作を経験しておくと、コミュニケーション能力も磨かれます。コミュニケーションには、発信する力、聞く力などが必要ですが、特に聞く力を養っておいてください。自分が作ったものに対して仲間や先生がどう思うのか、周囲の人の声に積極的に耳を傾け、さまざまな意見を自分の中に取り入れてみてください。最初からすんなりとは受け入れられないかもしれませんが、自分とは異なる視野からの意見を聞くことは必ず成長につながります。

具体的な指針

周囲の人の声に耳を傾け、最低5作品は作ってください。

3年間で最低でも5つの作品を作ってください。余裕のある人は8本でも10本でもかまいません。ただし、中途半端なものはダメです。さきほどお話したように、難しいものや完全トレースしたものに限ります。作品数が少ないと、その人の能力が判断しづらいからです。5作品のうち、動画が2作品以上あるとベターです。なかなかたいへんなことですが、それが希望する会社に就職できる一番の近道だと思います。

3年間で5作品を作ると決意したら、次は「何を作るか」です。作品を作る前には、必ず先生や仲間たちに「こんなものを作ろうと思うんだけど、どう思う?」と聞いてください。いざ作るとなると人間は簡単なものを選びがちなので、周囲の人の意見を聞き、誰かに自分の背中を押してもらった方ががんばれると思います。自分で自分を律することは至難の業なので、人の力を借りながら自分の限界を超えていってほしいと思います。

最後になりますが、もし映像を将来の生業として考えているのであれば、学生時代をすべて映像制作に費やしてほしいと思います。残念ながら遊んでいる暇はないのです。みなさん好きなことをするためにこの学校に入学したわけですから、好きなことに全力を注いでください。好きなことをやるのですから、きっと楽しいはずです。ぜひがんばってください。

髙橋正紀氏 プロフィール

株式会社白組
Director / VFX Director / CG Director / Senior Computer Graphics Artist
1968年生まれ。東京都出身。1990年に白組入社。劇場用映画、TVドラマ、CM、ゲームムービーなど多くの映像制作に携わる。主な参加作品は、『ジュブナイル』、『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』、『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、『永遠の0』、『寄生獣』、『海賊とよばれた男』、『DESTINY 鎌倉ものがたり』、『劇場版 コード・ブルー ドクターヘリ緊急救命』、『アルキメデスの大戦』、『キネマの神様』、『ゴーストブック おばけずかん』、『ゴジラ‐1.0』など多数。

髙橋正紀氏


◎CG映像科
https://www.neec.ac.jp/department/design/cgmovie/

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