日本工学院八王子専門学校AIシステム科2年の永田瑞生さんが、2023年10月に行われた「THE20th IEEE TOWERS」にて、「秋華賞馬券対象馬の予測:教師あり学習モデルの検証」に関する研究発表を行い、見事に「Undergraduate Student Award」を受賞しました。発表者の多くを大学生が占める中、AIシステム科としては昨年に引き続き2年連続受賞の快挙です。
「IEEE TOWERS」とは、「学生による学生のための学生の研究発表を、専門家以外にも分かりやすく説明することで、研究内容を企業・一般人・他の学生にも知ってもらうこと」を目的とした学会。会場では、学生や企業の若手研究者との間で活発な議論が交わされます。今回AIシステム科学生が受賞した「Undergraduate Student Award」は、学部生以下(高専生・高校生等を含む)の学生の中で、最も優れた発表をした1人が選ばれるものです。受賞した永田さんにお話を伺いました。
■「IEEE TOWERS」に参加したきっかけは?
もともと在学中に学外での研究発表を行ってみたいという思いがあり、AIシステム科の小林先生に誘われことがきっかけで参加しました。初めての学外での発表で、不安と期待が入り交じっての参加だったので、賞をいただけるとは全く思ってもいませんでしたが、一生懸命取り組んだ甲斐があり、「Undergraduate Student Award」を受賞することができました。
■「秋華賞馬券対象馬の予測:教師あり学習モデルの検証」というテーマを研究しようと思ったきっかけは?
もともと競馬が好きだったというのが一番の理由です。はじめは違うテーマについて研究しようと思っていたのですが、先生に研究テーマについて相談したところ、競馬をテーマにした方が面白いんじゃないかとアドバイスをいただきまして。自分でも趣味でいろいろと予想して馬券を買っていたのですが全く当たっていなかったので、「それなら趣味と実益を兼ねて、競馬の着順をAIで予想させる研究に取り組めばいいじゃん!」という結論になり、研究を始めました。
■着順を予想する仕組みは?
過去150万件ものレース結果や競走馬のデータを用いて機械学習を行い、AIモデルを構築しました。集めたデータは、着順、距離、斤量、騎手、競馬場データ、血統、調教師、生産牧場など。これらの膨大な過去のデータを基に、こちらが設定した条件のレースではどの馬が上位に来るかという確率をAIに算出させています。
■この研究の最終目標、到達点は?
構築したAIモデルは、現在でも精度がかなり高いと感じています。実際、2023年度のG1レース「秋華賞」「ジャパンカップ」では、見事に3連単を的中させています。ただ、この馬は絶対に来ないだろうという馬を上位に推奨してきてしまうこともあるので、この現象が起こらないようにするにはどうすればいいのかを模索中です。こちらが用意したデータをAIがどう学習して、何を判断基準にそのような馬を推奨しているのかは、機械学習を行わせた私でも分からないものなので、データの量をもっと増やせばいいのか、特徴量の調整を行えばいいのかなど、試行錯誤しています。
また、実績のある馬が上位に来るレースはかなりの精度で予測できるようになっていますが、実績通りにはならない、いわゆる荒れるレースでは精度がかなり下がってしまうので、そういったレースでの精度も上げていきたいと思っています。
■先生からはどのようなアドバイスがありましたか?
小林先生は学外での研究発表の経験が豊富なので、発表の仕方、ポスターでの見せ方について、さまざまなアドバイス、アイディアをいただきました。私は発表の経験が無かったので、自分の研究内容をどう見せるのかというところが、一番苦労したところでもあります。
発表を見る側の目線で、どう見せたら興味を持ってもらえるか、また研究内容、研究の魅力をどう表現すれば良いかなど、いろいろと相談させていただきました。私一人の力では、受賞という結果にはつながらなかったと思います。
■参加した感想は?
研究者や大学生、大学院生など、さまざまな方々との議論や対話が活発に行われる場所なので、もっといろいろ伝えられることがあったのではと思うこともありますし、もっとできたのではというところは反省点です。ただ、いろいろな方々と交流ができて楽しかったですし、さまざまな研究内容を聞くのも見るのも楽しかったというのが率直な感想です。これから自分が取り組む卒業制作の糧となりますし、今後の自分の学びにとっても、とても有意義な経験になったと思います。また、自分の経験不足な部分である研究発表の仕方についても、他の方々の発表は大変参考になるものでした。ここで得た経験は、これから取り組む卒業制作を行うメンバーにも還元していきたいと思います。