


日本工学院 情報ビジネス科のコースとしてスタートし、2021年4月より、国内外70カ所以上の観光施設を展開する、星野リゾートとの教育連携を開始した日本工学院のホテル・観光教育。2026年4月にはさらに既存のコースを再編し、ホテル・観光科(観光マーケティングコース、ホテルスタッフコース)として新設します。
コースからホテル・観光科へと引き継がれる学びの特徴の一つとして、産学連携によって行われる、プロスキル習得のための実践的なカリキュラムがあります。近畿日本ツーリストの現役スタッフを講師に迎えて行なっている「ツアー企画」もその一つです。ホテル・観光業を学ぶ上で大きな力となる、ツアー造成、プランニングのスキル・マインドを実践で身につける授業について、講師をご担当された近畿日本ツーリスト 佐藤祐介先生、そして受講した2年生の松本稜さんにお話を伺いました。

近畿日本ツーリスト(株) 横浜支店リーダー
ホテル・観光科 ツアー企画講師
佐藤 祐介先生
今回私が担当したのは、ホテル・観光科で学ぶ学生を対象とした産学連携の「ツアー企画」です。授業の目的は、旅行会社の実際の業務を体験しながら、改めて観光や旅の魅力を深く知ること。4月から半年間にわたって行なった授業の前半では、旅行会社がどのような仕事をしているのかを具体的に解説しました。ツアーの企画・立案からお客様への提案、販売、そしてツアーコンダクターとしての添乗業務まで、仕事の流れを一通り学んでいただき、学生にとって、観光・旅の仕事の現場を知る貴重な機会になったと思います。
後半では、学生主体のツアー企画に挑戦。まずは学校のある地元・蒲田をテーマに、日帰り観光ツアーを企画しました。インターネットで情報を収集し、実際に街を歩いて魅力を調査。各班がオリジナルのプランを作成し、添乗員役とお客様役に分かれて模擬ツアーを実施しました。ツアー後には良かった点や改善点を討論し合い、企画力やコミュニケーション能力を高めました。そして授業の集大成として、最後に軽井沢を舞台にした日帰りツアーを造成。実際に現地でツアーを実行し、終了後には学びの振り返りを行いました。半年間を通して、観光業の現場に近いリアルな学びを体験する充実したプログラムになりました。

半年間の実習を通して、学生たちは旅行会社の業務内容を実感し、ツアー企画の難しさやお客様視点の大切さを学んでいただけたと思います。単に「旅をつくる」だけでなく、参加者がどのように楽しみ、何を感じるかを想像する力が問われることを、実践の中で体験できたのではないでしょうか。班ごとに視点が異なり、地元の知られざる魅力を掘り下げる班もあれば、人気の王道コースを作る班もありました。学生たちの自由な発想と柔軟な感性から生まれた企画は、現場経験者の私にとっても新鮮な刺激でした。
特に印象的だったのは、地域ごとに異なる観光の意味を感じ取っていたことです。都会的な魅力の蒲田と自然豊かな軽井沢、どちらも人気の観光地ですが、その土地に人が集まる理由は異なります。地元に暮らす人々の営みや、地域ならではの文化や風土を知ることが観光の根本にあるということを、学生たちは肌で学び取っていました。また、ツアーを作る上で大切な時間配分や予算感覚など、プロの現場で求められる実践的なスキルにも触れました。限られた時間の中でお客様に最大限楽しんでもらうためには、現場での判断力や調整力が欠かせません。学生たちが作ったプランには、旅行会社ではなかなかできない大胆な発想も多く、私自身、改めて“楽しさ”の原点を思い出す機会になりました。

実習を通して印象的だったのは、学生たちが仲間と協力しながら一つの企画を作り上げていく姿勢です。最初は控えめで緊張気味だった学生たちも、回を重ねるごとに発想が大胆になり、実際に商品化できそうなほど魅力的なツアーも生まれました。仲間と悩みながら課題に取り組み、意見を交わし合う過程で、信頼や協調性が育まれていくのを感じました。また、軽井沢での実地研修ではあいにくの大雨に見舞われましたが、学生たちは慌てることなく冷静に行動し、状況に応じた柔軟な対応力を発揮。観光業に必要な「判断力」や「チームワーク」を身につける貴重な経験になったことと思います。
観光業は「人と人をつなぐ産業」です。ツアーを企画する上では、地域の方々やホテルスタッフとの連携も欠かせません。旅行会社の視点から、ホテル業界と密接に関わることの意義も伝えました。お客様の「楽しかった」「また来たい」という言葉が、何よりのやりがいです。近年は海外からの旅行者も増えており、語学力や異文化理解も重要になっています。学生時代から積極的に学び、人と関わる力を磨くことが大切です。観光業界は「平和産業」と呼ばれるほど繊細で変化の大きい世界ですが、学生たちがこの経験を糧に、未来の観光を支える存在へと成長していくことを期待しています。来期はさらに発展した実習内容を提案し、より深い学びの場をつくっていきたいと考えています。

ホテル・観光科(現・情報ビジネス科 ホテル・観光コース) 2年
千葉県立八街高校出身
松本 稜
近畿日本ツーリストの佐藤先生による産学連携のツアー企画は、私にとって学びの多い授業でした。もちろんツアーをゼロから企画するのは初めてのことなので不安もありましたが、先生のわかりやすいスライドや丁寧な説明で、次第に観光の仕事の面白さに引き込まれていき、観光の仕組みやツアー造成、コンダクターとしての仕事などを基礎から理解することができました。
実習の後半では、班に分かれて四、五人のチームになり、実際にツアー造成、プランニングを行いました。蒲田と軽井沢、それぞれ日帰りのツアーを組んだのですが、軽井沢のツアーで私たちの班は「塩沢湖とタリアセン」を中心にしたプランを考案。ツアー造成では、移動ルートや観光時間の調整、参加者の満足度をどう高めるかなど、想像以上に考える要素が多く、実際の仕事の難しさと奥深さを実感。仲間とのディスカッションを重ねながら、情報収集や企画力、そしてお客様視点での発想力が少しずつ身についていきました。実際に実施したツアーでは、あいにくの雨という天気でしたが、アニメ『思い出のマーニー』の舞台となった美しい風景に触れ、写真を撮ったり舟に乗ったりと、観光の楽しさを肌で感じることのできるツアーになったと思います。

私がホテル・観光業界に興味を持ったきっかけは、ある海外映画でした。映画の中で主人公が、自分の手でホテルを建て、運営していく姿に憧れ、「いつか私もこんな仕事がしたい」と思いました。高校時代は飲食店で3年間アルバイトをしており、人と話すことやサービスを通して喜んでもらうことの楽しさを知りました。そんな時、日本工学院のオープンキャンパスに父と参加。先生や在校生の明るく活気ある雰囲気に惹かれ、ここで学びたいと感じました。特に、星野リゾートと提携しているホテル・観光科に魅力を感じ、「ここなら観光の専門知識や実践力を身につけられる」と確信。入学後は、言葉遣いやマナー、ホスピタリティなど、想像以上に奥が深く難しい世界に戸惑いながらも、夢に向かって努力を重ねました。授業や実習を通して「お客様の笑顔のために自らできることを考える」姿勢が育ち、憧れた世界が、少しずつ現実に近づいていくのを感じました。

半年間のツアー企画を通して、観光とは「人に喜んでもらう仕事」だと強く感じ、達成感とともに自分の成長を実感する貴重な時間になりました。現在はレストランへの就職が決まり、これから始まる社会人生活に向けて、毎日の授業でまだまだ学びを深めています。佐藤先生のツアー企画で学んだ「お客様に寄り添う伝え方」や「物事の組み立て方」「ホスピタリティ」は、レストランの接客の現場でも生かしたいと思っています。以前アルバイト先で観光客の方に「この辺りのおすすめスポットは?」と聞かれた時、佐藤先生から教わった知識をもとにルートを提案したら、「本当に行ってよかった!」と笑顔でお礼を言われたことがありました。その瞬間、観光の学びと接客の喜びがつながった気がしました。今後はお客様に「この人に会えてよかった」と思ってもらえるような接客をめざしたいです。雨の中で実施した軽井沢ツアーのように、思い通りにならない場面もありますが、経験から学び、次に生かす力を身につけていくことが大切だと感じています。日本工学院で学んだホスピタリティの精神を胸に、これからも成長を続けていきたいです。