オンラインツールを自由自在に使いながら、グループワークでプロジェクションマッピングの大作をつくり上げた学生たち。
昨年に引き続き無観客ライブ配信となった上映会(東京ビッグサイト)
CG映像科では、プロジェクトへの参加を通してCGクリエイターとしてのスキルアップをはかるPBL(Project Based Learning)を教育に取り入れています。「東京国際プロジェクションマッピングアワード」への参加もその一つ。学生が主体となってプロジェクトに関わることで、能動的な学習法や実践力を養います。
2021年に行われた「東京国際プロジェクションマッピングアワード Vol.6」では、2年生チーム「Bee」の作品が一次審査を通過し、最終審査となる11月の上映会に進みました。アワード事務局と各チーム間におけるワークショップや中間制作物の講評会など、一昨年までは対面形式で行われていましたが、2020年から感染症対策のためオンライン形式に変更。11月の上映会も無観客ライブ配信で開催されました。
感染症対策の影響で各チームが多くの部分をリモート環境で制作するなど、昨年に引き続きニューノーマル(新しい常態)時代の新たな映像制作に注目が集まった今大会。日本工学院チームも、学生たちが主体的にさまざまなオンラインツールを使い分け、ほとんど対面せずにオンライン上で作品を完成させました。対面形式で行う従来の制作とは違い、一人ひとりが作業に没頭できるオンライン制作は、それぞれの主体性や創造力、コミュニケーション能力を大きく引き上げ、学生たちは大きな成長を遂げました。
「東京国際プロジェクションマッピングアワード」のスケジュールは、企画、映像制作、上映会・最終審査の3段階に大きく分かれます。例年は、4〜5月頃から国内外の学生に幅広く参加を募り、6月に一次審査(企画書などの書類審査)を実施。最終審査に進んだ各チームは個別にアワード事務局とワークショップや講評会を行い、11月の上映会に向けて作品を完成させます。
ところがVol.6では、感染症対策のため、2020年に引き続きアワード事務局とのやり取りがオンライン形式に変更。ワークショップや講評会についても、最終審査に進む全チームが参加するオンライン形式(Zoomを使ったビデオミーティング)で行われました。学内でも同様に、プロジェクトメンバーを募った6月のオリエンテーション以降、学生たちは企画立案や映像制作などほとんどの作業をオンラインで進行。11月の上映会で久しぶりにメンバー全員が顔を合わせ、巨大スクリーンに映し出させる作品を共に鑑賞しながら、感動を分かち合いました。
今大会のプロジェクトメンバーは総勢14人。人類の栄枯盛衰にスポットを当てた物語作品だったので、「導入・絵本・戦争・未来」の4つのグループに分かれ、物語の段落ごとに分担して制作しました。それを企画立案者でチームリーダーを務める滝さんがマネジメント。映像作品に使用する音楽は、ミュージックアーティスト科の学生に依頼して制作しました。そして、それら全体を小嶋先生がファシリテーター(中立的な立場から活動を支援する)役としてサポート。学生の主体性を尊重しながら、プロジェクト全体を支えていきました。
●Web会議ツール「Zoom」は、アワード事務局とのワークショップや公開講評会に参加する際に使用。日本工学院からは滝さんが参加し、当日の成果を「LINE」を使って各メンバー間で共有しました。また、日本工学院ではオンライン授業でZoomを使っていることもあり、先生を交えたチーム全体での話し合いの際にも使用しました。
●オンライン学習システム「Google Classroom」は、先生が過去に先輩が作ったビデオコンテを参考資料として掲示板にアブロードする際など、先生と学生とのデータのやり取りに使用しました。
●ゲーマー向けのボイスチャットツール「Discord」は、動きが軽く、しかもボイスチャット、音声通話、データのやり取り、メンバー間の画面共有などができるため、学生同士のやり取りのほとんどがDiscordを使って行われました。
●このほか、アワード事務局との連絡にはビジネスチャットツール「Slack」を、ミュージックアーティスト科との曲の打ち合わせには「メール」を使用しました。
このように、オンライン制作と一口に言っても、Webカメラで相手を見ながらの打ち合わせや映像データの受け渡し、スケジュールの管理など、その内容は多岐に渡ります。そのすべてについて、学生たちは臨機応変にオンラインツールを使い分け、自由自在にプロジェクトを推進。オンラインツールは、学生たちの主体性や応用力を高める重要なツールとしてプロジェクトを支えました。
最終審査を兼ねた上映会は11月13日、東京ビッグサイトで行われました。今年は昨年に引き続き感染症対策のため無観客で行われ、逆三角形の会議棟に投影された映像をオンラインでライブ配信。上映会当日は日本工学院のチームメンバーたちも会場に集まり、その場で自分たちの作品を鑑賞しました。プロジェクト発足以降、感染症対策のため思うように制作できない状況の下でも、学生たちは自由自在にオンラインツールを駆使し、自分たちが誇れる作品をつくり上げました。逆境を力に、チーム一丸となって作品制作に打ち込んだ体験は、学生たちにとってかけがえのない財産となりました。
プロジェクションマッピングプロジェクトについて詳しくはこちら
日本工学院 プロジェクションマッピングプロジェクト 学生メンバー
滝 実紀 CG映像科2年 長野日本大学高校出身 |
制作期間の最後の1ヶ月は、自宅で作業する際は常に「Discord」を起ち上げておき、メンバーと意思疎通をはかりながら作業を進めていきました。日常的な連絡やデータのやり取りはもちろん、完成データを提出する最後の瞬間も、Discord上でみんなと迎えました。ですから、オンライン制作が特別つらかったということはありません。最後の2週間は寝る暇もないほどの忙しさでしたが、すごく充実した体験でした。
友人に誘われてこのプロジェクトに参加し、企画立案に加わったことで企画作りの楽しさに気づきました。しかも、企画通りの作品ができ、とてもうれしかったです。メンバーが多彩なので、企画を実現できる技術を持っている人が誰かしらいるんです。実際、物語にモーショングラフィックス的な映像を入れたかったのですが、それをメンバーに話したらイメージ通りに作ってくれました。自分にとって初めてのグループワークだったこともあり、当初は不安でしたが、グループワークの楽しさを実感できました。
現在のCG制作の現場は、対面形式からオンライン形式の制作への過渡期にあると思われます。コミュニケーションの面ではこれまでの対面形式の方が優れていると感じますが、今回の学生たちのようにオンラインツールを使ってそれを補うことはできます。ややもするとオンラインツールを使ったコミュケーションは限られた人とのやり取りになりがちですが、意識して能動的にオンラインツールを使っていけば、可能性は広がります。
今後、対面形式からオンライン形式へと、CGの制作スタイルも少しずつシフトしていくでしょう。かつてのCG制作の現場では、監督ができあがった映像を見ながら修正点を指摘し、クリエイターたちがメモを取って修正作業に当たっていました。オンライン制作が進めば、チェックも修正も、よりスムーズかつ正確に行えるようになります。これからCGクリエイターをめざす人には、対面形式とオンライン形式を切り替えながら両方に対応できるスキルと柔軟性が必要になってくると思います。
◎CG映像科
https://www.neec.ac.jp/department/design/cgmovie/
日本工学院専門学校
デザインカレッジ
CG映像科
担当:プロジェクトワーク、デジタル演習
教師:小嶋 律史