CG映像科
東京国際プロジェクションマッピングアワード Vol...
2024/11/28
プロジェクションマッピングプロジェクトは、「東京国際プロジェクションマッピングアワード」への参加を通してCGクリエイターとしてのスキルアップをはかる、PBL(Project Based Learning)の一つです。PBLとは、学生が主体となってプロジェクトに関わることで能動的な学習法や実践力を養う学習形態です。通常のコンペティションは提出締切に合わせて作品を制作しますが、同アワードはエントリー後に定期的な作品提出が義務づけられており、都度、アワード事務局のチェックを受けるしくみになっています。そのため学生たちはエントリーから上映会当日まで常に進行状況を意識しながら作品制作に取り組むこととなります。それが「主体的に学ぶスタイル」に適していることから、PBLの対象としてこのコンペティションが選ばれています。
プロジェクションマッピングとは?…建物の凹凸や形状に合わせてCG映像を制作し、それを建物の壁面などに投影(マッピング)する映像演出技術です。
東京国際プロジェクションマッピングアワード Vol.8
2023年に開催されたVol.8は、学生または30歳以下の若手映像クリエイターを対象に、4月から募集がスタートしました。そして、数多くのエントリー作品の中から、6月の一次審査を経て31作品が最終審査にノミネート。CG映像科からは1~3年生の混成チーム「チームくいしんぼう」の作品『Dream factory』が一次審査を通過し、11月の上映会に臨みました。この作品は、お菓子の工場をモチーフに「押さえつけられた欲望を解放し、誰しもが持った子ども心を思い出して欲しい」という思いが込められた作品。今年から学生だけでなく30歳以下のクリエイターにも門戸が開かれたため応募数が増加し、上映会に進んだ作品数も昨年の倍近くに上る中、『Dream factory』が優秀賞を受賞。2016年開催のVol.1以降、8年連続で最終審査に進出し、昨年の最優秀賞に続き、2年連続でトップ3に入る快挙を達成しました。 |
上映会が行われた東京ビッグサイト |
上映会までのプロセス
CG映像科では、1年次にプロジェクションマッピングプロジェクトについての説明があり、翌年自分も参加したいという学生は、実際に上映会に参加して映像を鑑賞するよう勧められます(1年生の参加も可能)。その後、2年進級時のオリエンテーションで改めて先輩たちのつくった作品を鑑賞し、プロジェクションマッピングアワードに向けたプロジェクトの参加希望者を募ります。2年次は自分の作品制作で忙しくなりますが、両立させてでも参加したいという学生は多く、2023年は十数名が参加を希望。前年参加した3年生もアドバイザー役で参加し、各学年の混成チーム(1年生2名、2年生10名、3年生3名)でコンペに挑みました。 |
Vol.8のテーマは「OPEN」。それをもとに、企画を提案したいという学生たちが独自案を作成し、いくつかのアイデアが寄せられました。それらを絞り込み、企画を決定。アイデア出しや絵コンテ作成の打ち合わせなどはすべて学生たちが行い、先生はあくまでファシリテーター(中立的な立場から活動を支援する)役としてサポート。企画書提出期限まであまり時間がない中、企画発案者の小宮山ちさとさん(チーム代表)を中心に、企画を練り上げていきました。 |
日本工学院では、総合専門学校ならではの優位性を生かし、6つのカレッジの枠を越えた学び(カレッジ連携)が活発に行われています。このプロジェクトでも、映像作品に使用する音楽の制作を、ミュージックカレッジのミュージックアーティスト科に依頼。絵コンテをもとに、シーンごとに欲しい音楽の曲調や長さを伝え、できあがった音楽がイメージに近づくまで修正をくり返します。さらに、ミュージックカレッジのレコーディングスタジオにて大音量で試聴し、イベントで映える音の迫力を確認します。 昨年に続き、このプロジェクトに参加し音楽制作を担当したミュージックアーティスト科2年の矢澤拓登さんは、「効果音の制作から作編曲、MAまで、映像作品における音作りのすべてを経験できたことは大きな財産。全体の尺やテンポを意識しながら、シーンごとに使用楽器や調性(長調・短調など)を変えるなど、創意工夫を凝らしました。チームの一人ひとりが映像や音楽のスキルを生かし、一人では絶対に作れない作品をみんなで作り上げるのが楽しいです」と、学科の垣根を超えたこのプロジェクトの魅力について話してくれました。 |
音楽制作と並行して、ビデオコンテに基づき、メンバーがストーリーのシーンごとにCG映像を制作していきます。使用するソフトウェアは「Maya」、「Blender」、「NUKE」、「After Effects」、「Premiere」など。このとき、アワード事務局から提示されたフォーマットに従って映像を制作していくのですが、このフォーマットが映像を投影する東京ビッグサイトの建物の形(空間を挟む2つの逆三角形)になっており、構図が難しいため絵作りも一苦労。学生たちは約4ヶ月間、オンラインとオフライン(対面)を融合したハイブリッド形式で作品づくりに取り組み、とうとう約90秒間の映像作品が完成しました。 |
上映会は11月11日、東京ビッグサイトで行われました。一次審査を通過した31作品が順番に投影されていく中、『Dream factory』は19番目に投影。2020年開催のVol.5より無観客オンライン配信が続いていましたが、昨年から3年ぶりに有観客で開催され、今年は過去最高となる来場者数(8,526人)を記録。巨大なスクリーンに映し出される映像と大音量の音楽、シーンが変わるたびに湧き上がる歓声─。表彰式で優秀賞を受賞した学生たちは歓喜に包まれ、約半年間のプロジェクトが幕を下ろしました。
作品 & 制作メンバー
上映作品「Dream factory」 開放的な社会になった今こそ、これまで閉じ込められてきた欲望を解放(OPEN)する時! 膨らんでいく欲望を子ども心くすぐるお菓子に見立て、物語は進んでいきます。リズミカルでワクワクするような映像と音楽が、子ども心を持つすべての人を魅了する作品です。 |
◎チーム名:「チームくいしんぼう」
◎チームメンバー:小宮山 ちさと(代表)、佐藤 光琉、東原 大、中村 一咲、蓬田 瑞貴、泉谷 友紀、安田 武流、茂木 一駿、砂畑 侑志、佐々木 みのり、田中 千智、横井 哉太、津川 真侑、綿貫 魁、矢澤 拓登
チーム代表 小宮山 ちさと CG映像科2年 東京都・私立八王子学園八王子高校出身
私が日本工学院に入学したのは、高校時代、体験入学+オープンキャンパスに参加した際にこのプロジェクトの存在を知り、ぜひ参加したいと思ったからです。かねてより参加するなら企画段階から関わりたいと考えていたので、プロジェクトのスタートと同時に企画を提案。それがみんなに支持され、企画立案者の私がチーム代表になりました。当初は、モデルをつくる人、アニメーションをつくる人など、作業ごとに担当を分けていたのですが、企画の詰めが甘かったせいで遅々として進みませんでした。そこで、このままではいけないと3年生の先輩方にアドバイスをいただき、シーンごとに担当を分けてから一気にスパートをかけました。ボイスチャットツール「Discord」でやり取りしながら、作品提出日の朝まで徹夜でブラッシュアップするなど、苦労の連続でしたが、大規模なグループワークを経験できたことは大きな学びになりました。
—優秀賞を受賞して
上映会当日、初めて建物に投影された映像を観て、自分たちの作品が立体的に浮かび上がる光景に感動しました。投影中に観客の方々が歓声を上げてくださり、すごくうれしかったです。優秀賞発表の時を迎え、日本工学院の名前が呼ばれた瞬間、まさか受賞すると思っていなかったので本当にびっくりしました。チーム全員が壇上に呼ばれ、私が代表して受賞コメントをしたのですが、びっくりしすぎて何を言ったか覚えていません(笑)。その後、じわじわと嬉しさがこみ上げてきて、努力って報われるんだなと実感しました。自分に自信がつき、このプロジェクトに参加して本当に良かったと思っています。
©️東京国際プロジェクションマッピングアワード実行委員会
プロジェクションマッピングデザイナー
プロジェクションマッピング投影用の3DCG映像を制作する
コンサート関連映像クリエイター
コンサートのステージ上に設置される大型スクリーンに上映する映像を制作する
●その他CG業界で求められる職種全般(3DCGモデラー、CGアニメーター、コンポジターなど)
●ゲーム業界 ●アニメーション業界 ●映像業界 ●コンサート・イベント業界 その他
CG映像科
堀尾 潤子 先生
担当科目:VFX演習、デジタル演習
日本テレビ系列の制作会社で、ドラマのCGを中心に、ニュース、映画、野球のPR映像など、さまざまなジャンルのCG制作を手がける。また、映像制作の予算・進行・品質管理、外部制作会社のマネジメントなど、制作管理およびディレクション関連の経験も豊富。テレビ業界のCG制作に幅広い知見を持つ。
教育で心がけていること
学生の個性や自主性を最大限に生かしてあげたいと、常に思っています。なかには課題をこなせず悩んでいたり、そのことを人に言えない学生もいると思うんです。学生たちが悩みを打ち明けたり、学生同士が自由に意見を言い合えるような環境を作ることが私の役割。そうした環境でこそ、個性や協調性が育まれていくと思っています。
今回のプロジェクトでも、私はあえて口をはさまず、学生たちがのびのびと作品制作に取り組めるよう、ファシリテーター(中立的な支援者)として支えることに徹しました。困難は自分たちで乗り越えないと、他人に頼るクセがついてしまいます。それでは社会に出たときに通用しません。学生たちは映像制作の序盤こそうまくいかずに苦しんでいましたが、みんなで話し合って困難を克服し、しっかりした作品をつくり上げました。
学生がこのプロジェクトに参加する意義
CG制作の授業課題などは、個人作業が中心です。でも、社会に出たら、チームでCG映像を作るケースがほとんどです。それを在学中に経験しておくことは、将来必ず役に立ちます。コミュニケーションを密に取りながら、締め切りのある課題に全力で打ち込む経験は、社会の厳しさを知る上でも大きな効果があります。
また、あれほど巨大なスクリーンに自分の作品が投影される経験は、これから先もそんなにないでしょう。その大迫力を全身で感じ、観客の方々の反応を目の当たりにしたとき、学生たちは鳥肌が立つほど感動したと思います。そうした経験は、これからCGクリエイターとして活躍していく上での自信になるでしょう。上級生と下級生の垣根を越え、学科の枠を超えて目標に向かって協力する中で、社会で通用するスキルが身につくと思います。
プロジェクションマッピングの魅力
建物の壁面に立体的な映像を映し出すことで、醸し出される不思議な感覚。それが最大の魅力だと思います。映像と音楽が融合してストーリーを紡ぐことで、感動は何倍にも膨らみます。それだけに映像と音楽のマッチングが重要であり、投影する壁面の形に合わせた映像づくりが作品のクオリティを左右します。
今回、募集資格が学生だけでなく30歳以下の映像クリエイターにまで広がったことで、映像のクオリティは全体的に上がりましたが、映像と音楽のマッチングや逆三角形の壁面の使い方において、私たちのチームは十分にアピールできたと現場で感じました。シーンごとに音が付いていて、盛り上がりがあり、逆三角形を利用して陰影や奥行きを演出している。そこが審査員の方々に評価され、受賞に至ったのだと思います。
プロジェクションマッピングデザイナー志望者が今できること
一度、プロジェクションマッピングのイベントに行き、映像を見て感動している観客の方々の表情を見てほしいですね。みんな実に楽しそうな顔をしているんです。映像がどれほど人を感動させられるのか。それを知っていると、映像の作り手に回ったときに大きなやりがいを感じられると思います。
また、好きなアーティストのミュージッククリップでも、アニメでも、何でもいいので、いろんな映像作品を見ておくことをお勧めします。美術館で絵画を観るのもいいと思います。そして、それらをプロジェクションマッピングにしたらどう見えるかを想像してほしいのです。いろんな作品に接し、さまざまな構図を知っておくことがアイデアのストックとなり、将来映像を作る際に必ず役立ちます。
プロジェクションマッピングデザイナー志望者へのメッセージ
映像には、人の人生を変えるほどの力があります。私自身がそうでした。小さい頃、『スター・ウォーズ』のビデオをテープが擦り切れるまで観るほど大好きで、CG制作の仕事をめざすきっかけになったのです。みなさんも映像クリエイターになりたいという夢があるなら、夢をあきらめず、とことん追求してほしいと思います。
プロジェクションマッピングデザイナーの場合は、観客の反応をダイレクトに感じられるという魅力もあります。私は、東京ドームのLEDビジョンに映る選手紹介の映像制作に携わった経験がありますが、先輩に誘われて野球場に足を運び、自分の作った映像で観客のみなさんが盛り上がっている様子を見て、とても感動しました。お客様の生の反応はやりがいに直結しますし、それはプロジェクションマッピングにも共通することです。人を感動させ、ときには人の人生をも変えてしまう映像の作り手として、自信とやりがいを持ってぜひ作品制作に取り組んでください。私たちがみなさんの夢をしっかりと支えます。
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