平均寿命が世界中で上位にランクインする国・日本。しかしその反面、生活習慣病にかかる層の低年齢化や、肥満人口の増加など、健康に対する問題も依然抱えているのが現状です。そんな中、高齢者から若者まで、幅広い層がスポーツや健康に興味を持ち、フィットネスやトレーニングなどで意識的に自分の体を鍛え、健康増進に勤めようとする人が増えています。近年ではパーソナルトレーニングで肉体改造を行う、CMなどで話題になったジムや、筋肉トレーニングを指導するNHKの番組『みんなで筋肉体操』などの流行もその後押しに一役買って、今やフィットネス・トレーニングはトレンドの一つです。そこで、フィットネス・トレーニング業界の現状や今後の動向などについて、日本工学院スポーツカレッジ講師で、日本工学院の施設に最新のトレーニング機器を導入しているトレーニング&ウェルネス業界の一流企業・テクノジムジャパン株式会社所属の浅野友亮先生にお聞きしました。
今、一つ大きな流れと言えるのが、フィットネス・トレーニングのIT化です。ウェアラブルデバイスや専用アプリ、クラウド環境を活用してすべての行動(アクティビティ)を記録し、移動距離や燃焼カロリーを計測。心拍数や筋肉量といった体にまつわる様々なデータの管理を行うことが可能です。パーソナルトレーナーにとっても、IoTで得たデータを利用して、一人一人個人に合った、より的確なトレーニングメニューの提案ができます。
もうひとつの大きなトレンドは、仲間と楽しみながら、体を鍛える。そして自分の身体も個別に見て指導してもらえるグループトレーニング・グループフィットネス。グループ仲間で励まし、そして競いあうコミュニティがあるからこそ楽しく上達や向上も早い。参加者全員が一丸となって、目標達成に向かう高揚感も魅力です。トレーナーがうまく導きながらみんなをコントロールし、スムーズにトレーニングできるかというのがポイントになります。
日本工学院スポーツカレッジで使用する実習施設「メディカルフィットネスセンター(MFC)」には、数々の最先端トレーニングマシンが多数設置されています。スポーツジムから医療機関・リハビリ施設などさまざまな現場で使われているマシンを実際に使用して学ぶことのできるこの施設は、スポーツクラブとしても運営されていて、多くの利用者が毎日トレーニングを行なっています。ウェアラブルデバイスなど、最新のIoTを活用したトレーニングから、リハビリテーションまで、幅広い用途に利用されるこれらのマシン群の中から、今人気のマシンをいくつかご紹介します。
小スペースで250種以上の多様なトレーニングが可能(KINESIS)
全身の筋力・バランス・柔軟性・持久力をバランスよくトレーニングすることができる、画期的なマルチトレーニングマシンで、オリンピックの選手村にも導入されています。自由な動きを可能にするケーブルと、3つのポジションのハンドグリップを使い分けることで、わずか1平方メートルの小スペースで250種以上の多様なトレーニングが可能。数多くのジムで導入されているほか、医療機関・リハビリ施設などでも導入するケースが増えています。
グループで楽しみながら、一体感を持ってトレーニングするマシン(グループサイクル)
ゲームやレースなどのイベントをグループで楽しみながら、一体感を持ってトレーニングするマシンです。モニターにアプリケーションを使ってマシンと同期したゲーム映像や、体力、心拍数、ケイデンス(ペダルを回す速さ)などのデータを表示させてトレーニングを行います。施設スタッフは、映像や音楽をコントロールしながら最高のパフォーマンスができるよう誘導するほか、個人個人のパラメータを測定したパフォーマンスデータを、リアルタイムで見ながら、運動指導を行うことができます。
高齢者や手術後のリハビリ、スポーツトレーニングまで幅広い用途に対応(レッグプレスメッド【LEG PRESS MED】)
フットプレートを足で押し上げることで太ももやお尻など下半身に負荷を与えるトレーニング機器です。高齢者や手術後のリハビリ、競技力向上などのスポーツトレーニングまで幅広い用途に対応できるマシンで、『MED』の名の通り、メディカル系のフィットネスにも対応しています。今までのタイプとは違って、股関節から動かすことができるのが特徴で、ジャンプ運動にも対応している最新型のマシンです。
軸・体幹が重要視されるトレーニングで、短い時間で全身を鍛えることができる(クイックリフト)
マシンではないですが、今トレンドの一つとなっているのがクイックリフトです。短い時間で全身を鍛えることができるため、サーキットトレーニングや最近人気のクロスフィットネスの中の一つとしても行われることが多くなり、今では一般女性も普通にトレーニングに取り入れるようなりました。肩まで上げるクリーンと頭上まで挙げるスナッチという二つの方法があり、軸・体幹が重要視されるトレーニングです。
ここ数年で、目に見えて一般の方たちの健康や体づくりに対する意識が高くなってきているのを実感します。休日はもちろん、朝の出勤前にジムに立ち寄ってトレーニングしてから出勤するような方も増え、CMなどで話題になったジムの影響もあって、パーソナルトレーニングも人気があり、フィットネス人口も上がっています。さらに最近では、医療やリハビリの現場でもフィットネス・トレーニングが積極的に取り入れられるようになり、それに伴って、多くのジムをはじめとするトレーニング・フィットネス施設、医療機関やリハビリ施設など、幅広いシーンでトレーナー・インストラクターの需要が高まり、人材不足が言われています。
そんな時代の変化に対応し、進化し続ける日本のフィットネス・トレーニングで活躍することができる人材を育成するために、日本工学院スポーツカレッジでは、最良の環境を整えています。学生が授業でインプットしたものをアウトプットする場として、最先端のトレーニング施設・MFC(メディカルフィットネスセンター)を設置。上でご紹介しているような最新のトレーニング機器をはじめ、クラウドサービスを活用し、ICTを取り入れた最新のトレーニングスキルを習得することも可能な設備を揃えています。またトレーニング理論をはじめとしたフィットネスプログラムの知識や指導力と、ウェアラブルデバイスなどのICTを活用した健康運動管理のスキルを評価するための「パーソナルウェルネストレーナー(PWT)」の資格制度を導入。さらに病院に併設されているフィットネスクラブや病院内にあるフィットネスクラブ、高齢者の介護施設で適切に指導するためのノウハウを学び、医療の知識を併せ持つレベルの高いトレーナー「メディカルフィットネストレーナー」をめざす授業も展開しています。
これまではヨーロッパやアメリカの流行を追従していた日本のトレーニング・フィットネス業界ですが、これからは、日本が先頭に立って、世界へ発信して行く時代となるでしょう。日本工学院スポーツカレッジでも、トレーナーやインストラクターをめざす方がたくさん学んでいます。運動が好きで、トレーナーやインストラクターの仕事に興味のあるみなさん、日本工学院で学び、日本、アジア、そして世界へスポーツの楽しさを伝えて、一緒に現場のウェルネスライフを実現させていきましょう。
スポーツカレッジ講師
メディカルフィットネスセンター管理運営
テクノジムジャパン株式会社