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CG映像科 (3年制) NEWS & TOPICS

CG映像分野のクリエイターを育成するCG映像専門学校。

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真鍋氏特別講演|News&Topics|日本工学院

2020年07月08日
蒲田校

新しいアイデアを生み出すヒントは
過去の作品や作家が教えてくれる。

2019年11月27日(水) 日本工学院専門学校で、デザインカレッジ、ミュージックカレッジの学生を対象に「過去から学ぶ未来を切り開く表現」と題して真鍋大度(まなべだいと)氏をお迎えした特別講演が行われました。
真鍋氏はRhizomatiks(ライゾマティクス)創設メンバーであり、最新のテクノロジーを駆使してデザイン、アート、エンターテイメントの領域で活動している世界的なメディアーティストです。今回の講演では、クリエーター志望者に向け、ご自身の生い立ちからクリエイティブの舞台裏までお話いただきました。密度の濃い講演の内容をご紹介します。

「過去から学ぶ未来を切り開く表現」真鍋大度(まなべだいと)氏をお迎えした特別講演風景

一冊の本と出会ったことから
プログラムと音楽が繋がった

講演の冒頭で真鍋さんが語ったのは、アメリカで過ごした少年時代からRhizomatiks設立に至るまでの経緯です。ご両親ともにミュージシャンという環境で育った真鍋さんは、小学校の頃からパソコンで作曲したり、ベーシックというプログラミング言語でゲームを作ったりして遊んでいました。
「日本に帰国してからもDTMで曲を作ってアメリカのエージェントと契約するなど、一時は本気でミュージシャンを目指しましたがうまくいきません。大学ではスケボーのかたわら、プログラムを書いたり、幾何学を研究したりしていました」
ちょうどその頃、真鍋さんはヤニス・クセナキスというギリシャ人が書いた「音楽と建築」という本に出会います。
「この本には、音楽と数学の関係が書かれていて、代数や確率論を使って作曲することを初めて知りました。興味のある人は、ぜひ読んでください。僕がプログラミングで音楽を作るきっかけになった本です」
大学を卒業した真鍋さんはサラリーマンになりましたが、アートの道に進みたいと思い、25歳の時に学校に入り直しました。大学時代の仲間たちとRhizomatiksを立ち上げたのは2006年、30歳の時です。

「過去から学ぶ未来を切り開く表現」真鍋大度(まなべだいと)氏をお迎えした特別講演風景

ブレストに時間を費やすなら
プロトタイプを作った方が早い

「僕たちはエンジニアで手を動かすのに長けているため、実践を優先します。ブレーンストーミングに時間をかけるよりプロトタイプを作って、みんなで実際に触ってみる方が早い。最近、デザインを教える学校では『デザインシンキング』といって、考え方を優先している。でも、僕たちはもう少し実践的にやるべく「クリエイティブアクション」という方針で取り組んでいます」そう話す真鍋さんが、実際にどのようにプロジェクトを進めているのか、一つの事例を紹介してくれました。
「ネットワークが4Gから5Gになった時に、世の中に起きる変化を期待させるようなプロモーションを考えて欲しいというオーダーを受けました。そこで、僕たちが提案したのは、3人組のアーティストがロンドン、ニューヨーク、東京の3カ所に分かれてライブを行い、リアルタイムで合成するというものです」
次世代通信規格の5Gを使うと、4Kの映像と2チャンネルの音声を送る際の遅延を1秒間に固定できます。そこで、1秒間早くロンドンとNYでライブを初めて、東京と合成すれば、同じところでパフォーマンスしているように見えるというアイデアでした。
「でも、ただ合成するだけでは面白くありません。そこで、16台のカメラを3つの会場の同じ位置に設置し、3Dの情報とカメラの位置情報を使って、今までにないワイプ合成のテクニックを作り出しました。この表現手法を実現するためには大きな開発、実装チームが必要だったため、ライゾマティクスのエンジニア20人体制で臨みました。」

「過去から学ぶ未来を切り開く表現」真鍋大度(まなべだいと)氏をお迎えした特別講演風景

アイデアの原点を調べて
今だからできることを探す

真鍋さんは、アイデアを形にする時に一番重要なのは、過去の作品のサーベイ(調査)だと語ります。
「離れた場所からリモートでライブをやる、というアイデアの原点はどこにあるのか。調べてみると、モホリ=ナジというバウハウスで活躍したアーティストが、遠くにいる人に電話で指示して絵を描かせるテレフォンペインティングシリーズという作品を1922年に発表していました」
そこから派生した作品には、電話や衛星通信など、それぞれの時代の先端技術が使われています。100%新しいアイデアを生み出すのは難しくても、5Gという新しい技術を使えば、それを少し更新できる。今の時代だからできることを見つけるために、原点から現在に至る作品のサーベイが大切なのだと真鍋さんは言います。

「過去から学ぶ未来を切り開く表現」真鍋大度(まなべだいと)氏をお迎えした特別講演風景

講演の最後は、真鍋さんからクリエーターを目指す学生たちへのアドバイスで締めくくられました。
「クリエーターとして過去に誰もやっていない新しいアイデアを求められることがあります。難しいけれど、それが評価を得る近道でもある。新しいものを生み出すためには、まず過去の作品や作家を調べることです。ただ調べるだけでなく、いつでも参照できるように整理すれは、その積み重ねが大きな力になるでしょう。自分なりにいろんなサーベイやリサーチをストックして、武器にしてください。未来を切り拓くためには、過去に学ぶことが大切なのです」
いま、最も興味があるのはAIの周辺技術だという真鍋さん。次々に生まれる新たなイノベーションを取り込みながら、この次はどんな作品を見せてくれるのか、世界中が期待しています。

「過去から学ぶ未来を切り開く表現」真鍋大度(まなべだいと)氏をお迎えした特別講演風景

真鍋大度氏プロフィール

東京を拠点に活動するアーティスト、インタラクションデザイナー、プログラマ、DJ。2006年Rhizomatiks 設立、2015年よりRhizomatiksの中でもR&D的要素の強いプロジェクトを行うRhizomatiks Researchを石橋素氏と共同主宰。 身近な現象や素材を異なる目線で捉え直し、組み合わせることで作品を制作。高解像度、高臨場感といったリッチな表現を目指すのでなく、注意深く観察することにより発見できる現象、身体、プログラミング、コンピュータそのものが持つ本質的な面白さや、アナログとデジタル、リアルとバーチャルの関係性、境界線に着目し、デザイン、アート、エンターテイメントの領域で活動している。

真鍋大度氏サーベイ資料
https://scrapbox.io/artresearch/

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