応用生物学科では、2年次より通常の授業とは別に、希望者を対象にした課外活動として「プロジェクト」を通じた自主的な学習を推奨しています。学生それぞれがテーマを決め、これまでに学んだ事を活かして商品開発を行なうプロジェクトでは、発案から開発、商品作り、そして卒業展での完成品発表までのすべてを学生自身が行います。
日本工学院卒業展2024にて発表された”かわいく洗う透明石鹸『Söopo』”は応用生物学科2年生の森茜穂さんのプロジェクト。森さんは前年度の1年間意欲的にプロジェクトに取り組み、卒業展にてその結果をプレゼンテーション、高評価を得ました。プロジェクトでの経験によって多くのことを学び、スキルアップし、そして大手企業への就職も叶えた森さんにお話を聞きました。
森 茜穂
応用生物学科2年
三重県立神戸高校出身
日鉄鉱業 研究開発部新素材開発課 内定
私がプロジェクト参加を決めたのは、先輩の酒粕石鹸プロジェクトを昨年の卒業展で見た時。私も自分のアイディアを活かした新しい石鹸を開発してみたいと思ったのがきっかけです。このプロジェクトは参加から開発、発表まで自分主体で進めていくというところにも惹かれ、ぜひやってみたいと意欲を持って先生に相談をし、志願したのです。
まずはターゲットを10~20代の女性とし、肌に優しく、『かわいく洗う』をコンセプトに気軽に友達にプレゼントできるような石鹸にすることを決定。さらにボディケアについて色々と調べる中で、体を洗う際にタオルを使わず、固形石鹸を直接肌につけて洗う女性が多いことを知り、背中も洗いやすい石鹸を作りたいと考えました。
固形石鹸で肌に優しいものを調べる中で、保湿成分の入ったグリセリン石鹸を発見。グリセリン石鹸は透明で色が可愛いことから、持ち手の棒をつけてアイスキャンディ型にすれば、見た目もかわいく背中の洗いやすい石鹸ができると思いついたのです。
作業を行うのは授業の後、午後の時間で週一回、空いた教室を使って実験を繰り返しました。基本的には自分一人で考えて取り組むのですが、うまくいかなかったり不明点があれば先生に聞き、その度にアドバイスをいただきました。夏休み明けから本格的に取り組み始めたのですが、ベースとなる石鹸を作り、もう一度溶かして形に入れるところで透明にならなかったりといった問題が発生。自分で原因を調べ、先生へも相談しながら対処方法を模索しました。加える成分の量を1mlづつ変えて試したりするなどさまざまな方法を試し、やっと思ったような試作が完成したのは年が明けてから。発表の場となる卒業展までもう時間は少ししか残されていませんでした。 |
卒業展での展示に向け大量生産に入ろうとしたところでもまた問題に直面しました。それまでの溶かし直したものは型に入れると固まっていたのですが、一から生産したものが同じようにやっても固まらず、原因もわからず悩みました。1ヶ月ほどかかり、原因が型の材質にあった事を突き止め、ようやく複数生産することができたのは卒業展の間近。ぎりぎり間に合わすことができて、ほっとしました。 卒業展本番では、ロゴと写真を載せ、コンセプトを明記したパネルも展示。”かわいく洗う透明石鹸『Söopo』”として透明で色鮮やかなアイスキャンディー型の石鹸を10個展示しました。来場された方の目を引くことができ評判も上々、とても良い形でプロジェクトのフィナーレを迎えられて、やり遂げた達成感とモノづくりの喜びで胸がいっぱいになりました。 |
毎日の授業を受講し、さらに就職活動にも時間を取られる中、少ない時間を使って行うこのプロジェクト。時に本当に完成できるのだろうかと不安になりながらも、先生の励ましもあり最後までしっかりと取り組むことができました。すべてを一人で取り組んだことで、苦労もたくさんしましたが、とても大切な経験を伴って大きくスキルアップすることができたと思っています。
言われた事をただやるのではなく、自分でスケジュールを組み、プロジェクトのマネジメントを行うこと、またわからないことがあったり開発につまづいた時も、ただ先生を頼るのではなく、自分である程度調べてから先生に聞きにいくこと。自分で考え、行動するということの重要さに気づくことができたのもこのプロジェクト型学習の良いところだと思います。また、授業で先生に教えてもらったことを、自分が実際に取り組んでみることで、初めて理解できたことも多くあり、実践で学ぶことの大切さを知りました。
一年次に6人グループで参加した産学協同プロジェクト、そしてこの1人で行った透明石鹸プロジェクトに取り組んだ2つの経験が、自分の進路にも大きく影響したのを感じています。授業を受けるだけでなく、自分から積極的にプロジェクトに参加し取組むことで、曖昧だった自分の進路を決定する道標にもなりました。卒業後にこの4月から携わる仕事は研究開発補助職といって、成分を調べてその後の開発への橋渡しをする部門です。この在学中の実践経験を仕事の中で活かし、開発にも携わっていけるようさらにスキルアップしていきたいと思っています。 |
プロジェクト型学習は、2年次より行われる自由参加の活動で、企画から実験、開発、製造、そしてプレゼンテーション・発表までをすべて学生主体で行うものです。
今回、森さんが行なったプロジェクトはオリジナルの石鹸の開発です。応用生物学科の通常の授業で学んだ化粧品成分や鹸化の仕組みなどの知識・技術を生かして実践し、スケジューリングから実験、製造まで一人で取り組みました。上手くいかず開発が先に進まないときも、すぐに教師を頼るのではなく、できる限り自分で調べ、考えて問題解決に挑むことを心掛けていました。通常の授業や就職活動もある中大変だったとは思いますが、無事に製品として完成させることができ、大きな成果を残すことができたと思います。森さんには卒業後もこの経験を生かし、プロの世界で活躍していって欲しいと思います。
森内寛 先生
日本工学院 テクノロジーカレッジ 応用生物学科教師
[プロフィール]
生化学や遺伝子工学授業や実習を担当しているほか、これまでに学科のチーズ製作プロジェクトを中心にプロジェクト型学習を担当してきた。銀座鈴屋とのプロジェクトについても学生を指導し、サポートを行った。
プロジェクトでの経験は、知識やスキルを高めるだけでなく、発想力、実現力も身につけることができ、またコミュニケーション能力や社会人基礎力といった人間力のアップにも大きな役割を担います。プロジェクトを遂行したことで自信がつきますし、終わった後には、充実感とともに自分の成長を実感することができるでしょう。皆さんも応用生物学科でぜひプロジェクト型学習にチャレンジしてみてください。