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ゲームクリエイター科 4年・2年制 NEWS&TOPICS

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ゲームクリエイター科 4年・2年制 NEWS&TOPICSゲームクリエイター科 4年・2年制 NEWS&TOPICS
2021年06月17日
蒲田校八王子校

ゲーム業界をめざすみなさんへ

これからゲーム制作を学ぶうえで心にとめておいてほしいこと。
クラウド、地球儀、箱の外。

平林先生

日本工学院がゲームクリエイターの育成を始めて約30年。その間、ゲームのテクノロジーは急速に進化し、ゲーム業界も大きく変わりしました。そして将来、みなさんがゲームクリエイターとして活躍する10年後のゲーム業界はどうなっているのでしょうか。ゲームアナリストとしてゲーム業界を見つめながら、ゲームクリエイターの育成にも取り組んできた平林先生に、ゲームの未来とゲーム業界のこれからについてお話を伺いました。

ゲームの未来

クラウドゲーム

ゲーム業界を一変させる可能性を秘めた、今後10年のメガトレンド。

プラットフォームというコトバをご存じですか。「ゲームソフトを動かすための土台となる環境」を表すコトバです。これまでそれぞれのゲームメーカーは特定のプラットフォームで動くゲームソフトを作り、プラットフォームをめぐる争いがくり広げられてきました。そこにいま、「クラウドゲーム」という巨大なプラットフォームが新たに加わろうとしています。

クラウドゲームとは、ゲームのデータが全部サーバー上にあり、プレイヤーがそれを手元の端末で受け取って操作するとその信号がサーバーに届き、サーバーがその信号を処理するというYouTubeと同じしくみのゲームです。十数年前から動きはあったのですが、いよいよ巨大データセンターを持つグーグルやアマゾンが本格的にサービスを始めました。いまや音楽の世界ではストリーミングが当たり前になり、映像の世界でもデータセンター内の動画を手元の端末で視聴する動画配信サービスが一般的になっています。次はゲームの番だと考えるのは当然のことで、いまはさまざまな問題が指摘されていますが、いずれは解決するでしょう。そして、世界中が同時につながる「グローバルネットワーク」が実現すれば、クラウドゲームは一気に世界中に広がると思います。

クラウドゲームの普及によって、マーケティングやコミュニケーションも大きく変わるでしょう。2019年、初めてインターネット広告費がテレビメディア広告費を超えました。テレビで不特定多数の人に広告を打つより、インターネットでゲームが好きな人にだけCMを流した方がはるかに効率的なのですから、その流れは必然です。今後はそこからさらに発展し、ネット上の広告を見てクリックしたら、その場で瞬時にゲームが始まるようになるでしょう。つまり、プロモーションとゲームの購入とゲームのプレイがシームレスにつながっていく。それが今後10年以内に確実に起こるでしょう。クラウドゲームは、世界のゲーム業界の今後10年のメガトレンドになると思います。そして、それをつなぐ通信手段として5G/6Gがあり、IoTやAIを巻き込んで、ゲーム業界が根底から大きく様変わりする可能性があります。

クラウドゲームイメージ

IoT(Internet of Things)/ウェアラブルコンピュータ

「チップをどこに埋めればおもしろいかコンテスト」がいま、壮大に行われています。

コンピュータの世界は、常に小型化が起こっています。以前は回路基板に入っていたコンピュータが極小のチップになり、クルマや家電に取り込まれて「IoT」と呼ばれ、メガネや時計に付いて「ウェアラブル端末」と呼ばれて世の中に広まっています。ゲームの世界でも、チップの活用方法が大きなテーマになっています。いわば「コンピュータチップをどこに埋めるとどんなおもしろさが生まれるんだろうコンテスト」が壮大に行われているのです。コンタクトレンズにチップを埋め込み、ゴーグル無しでVRゲームを楽しんだり、ウェアラブル端末を通して呼吸や脳波を入力信号として取り込み、それをパワーに変えて戦う格闘ゲームがあってもいい。そんなことを考えるのも未来のクリエイターの仕事になるかもしれません。

AI(Artificial Intelligence)

AIが人間に代わって最適解を導き出す。ゲームはもっともっとおもしろくなる。

一般的なAIとゲームにおけるAIは少し違います。AI的なものは昔からゲームにはたくさん入っていて、格闘ゲームの敵の動きなどはAIのように進化してきました。いま、注目されているゲーム内AIとは、これまで人間が作ってきたものをAIに作ってもらおうというものです。例えば、これまでゲームのステージはレベルデザイナーというプロが設計し、ゲームの難易度を決めてきました。ところが、障害物ゲームなどの場合、コンピュータにキャラクターと障害物だけを与え、機械学習させてディープラーニングで最適な配置を決めるといった研究があちこちで行われています。また、どのタイミングでゲームを難しくすればプレイヤーは課金するかなどをプレイログなどから解析する「メタAI」(ゲームシステム全体を制御するAI)の研究も進んでいます。

IoT・AIイメージ

次世代ディスプレイ

ディスプレイは四角形が当たり前だった時代が、終わろうとしている。

アーケードゲームからファミコン、スマホ、クラウドゲームにいたるまで、これまでのゲームは常に四角い画面を前提にしていました。それとは別に、ディスプレイそのものが丸くなったり、曲面になったり、重ね合わせることが可能となるような技術の研究も進んでいます。例えば、ディスプレイを折りたたんだり、みんなで持っているものをつなぎ合わせたり。次世代ディスプレイは業界の注目度も高く、ディスプレイの使い方も大きく変わってくると思います。

これからのゲーム業界

クロスプラットフォーム

プラットフォームの争いが終焉を迎え、経営面でも変革が起きている。

これまでの日本のゲームメーカーは、どのプラットフォームでゲームを作るかが大きな経営課題でした。コンシューマーゲームを作るか、スマホゲームにするのか、開発費をどのように配分すれば最大効率を得られるのか。近年、その悩みは薄れつつあります。コンシューマーゲームとスマホゲームの技術的な差が縮まったことなどにより、すべてのプラットフォームに対応するゲームを作る、いわゆる「クロスプラットフォーム」でゲームを開発する会社が増えています。そしてこの傾向は、これからの主流になっていくと思います。

クラスプラットフォームイメージ

独創性

独創性のあるゲームクリエイターを、ゲーム業界は心待ちにしています。

これからの日本のゲームメーカーは、クロスプラットフォームの考えに基づき、クラウドゲームのコンテンツも作っていくでしょう。コンシューマーゲームの人気タイトルをクラウドゲーム用に移植したり、リメイクすることも十分あり得ます。ただし、巨大データセンターを持っていないからといって、世界のゲーム業界をリードしてきた日本のゲームメーカーが手をこまねいているわけはありません。それぞれの会社が新たな試みを始めています。

例えば、任天堂は、「Nintendo Switch」にダンボールを取り付けて釣りやドライブを楽しんだり、リングをお腹で回すことでフィットネスができたり、ゴーカートを画面の中だけでなく家の中で走らせたりと、さまざまなアイデアを商品化しています。それらを見ていると、これからのゲームは、画面の中だけで完結するゲームと、画面の中だけでは完結しないゲームに分かれていくと思います。だから、データセンターを持っているからといって必ずしも優位とは限りません。

こうした状況のもと、いまゲーム業界がゲームクリエイターに求めているのは「独創性」です。いま当たり前と思っていることが、10年後にはまったく違うことになっているかもしれませんし、その逆も起こり得ます。いままではただのボードゲームだと思っていたものがインターネットと組み合わせるとこんなにもおもしろくなるとか、IoT型のボードゲームを誰も作っていないから自分がおもしろいものを作ってやろうとか、どんどん自由に発想・創作してみてください。私が理事を務める日本ゲーム文化振興財団でも、若手ゲームクリエイターの独創的な創作に対して助成する活動を行っています。これからゲームクリエイターをめざす人は、おもしろがりながらも、いままでの自分の殻を破ることが大切だと思います。

インターナショナルな会議

インターナショナルとグローバル

いま必要なのは、インターナショナルなセンスを持ったゲームクリエイター。

独創性に加え、ゲーム業界で活躍するうえで必要なのは、インターナショナルとグローバルに対する正しい理解です。グローバルとは、文字通り地球全体で均一に起こっている事象や価値観です。ゲームに例えれば「テトリス」がそうです。上からブロックが降りてきて揃うと気持ちいいという感情は、国籍や宗教、文化や言語関係なく楽しい。サッカーゲームもグローバルに含まれるでしょう。一方、自分たち固有のものは何かを十分理解したうえでお互いの国と国について認め合うことが、インターナショナルです。ハリー・ポッターやディズニーランドは外国の文化ですが、ちゃんと受け入れられています。世界中で日本の侍(サムライ)が人気なのも、インターナショナルな存在だからです。ぜひインターナショナルな価値観を身につけ、グローバルはもとより、インターナショナルなゲームが作れる人になってほしいと思います。

みなさんへのメッセージ

平林久和 先生

ゲームクリエイター志望者がいまできること

グーグルアースでもいい。地球儀を眺める習慣をつけておこう。

IoTでもAIでもゲームでも、必ずプログラムを使います。だから、プログラマーという職業は絶対なくなることはありませんし、プログラミングの勉強が無駄になることもありません。ただ、プログラマーをめざすなら数学が得意な人の方が有利なんです。世界に向けたゲームを開発するゲームプログラマーになりたいなら英語も必要です。これらは早めに勉強しておいた方がよいでしょう。

また、インターナショナルなセンスも養っておいてください。地理に詳しくなるということではなく、よその国の地名を聞いたらすぐ反応できるようになれば十分です。そのためには日頃から地球儀を眺めること。グーグルアースでもいいし、グーグルストリートビューで知らない街を探訪したっていい。自分の興味の範囲を身の周りからどんどん広げていってください。本来、インターナショナルな感覚を養うには、何か自信になるものを持ったうえで異文化の人たちとふれあうことが有効なのですが、地球を意識して日々を過ごすだけでもインターナショナルな感覚は少しずつ養われると思います。

これからゲームクリエイターをめざす人へ

箱の外に目を向け、やわらかいアタマで発想する人になろう。

ゲームは、いつの時代も変わらない普遍的なことと、技術の変化によって変わる可変的なことでできています。その2つを自分の中で組み合わせ、自ら考える力を持つことが非常に重要です。その普遍的なこと(ゲームの基本的なしくみなど)を学ぶところが専門学校であり、これからゲームクリエイターをめざすなら、専門学校を卒業する数年先を見据えて学んでいかなければなりません。その際、心がけておいてほしいことがあります。

それは、発想を柔軟にするということです。10年後のゲームの姿は、いまのままではありません。ゲームの未来は無限の可能性を秘めています。その中で勉強するということは、固定された枠からどれだけはみ出せるかがポイントになってきます。これを英語で「アウト・オブ・ボックス」と言います。箱の外側に目を向ける、箱の外側の発想をするという意味です。ガラケーがなくなってスマホが生まれたり、ゲームセンターが減ってクラウドゲームが登場したりと、ゲームは常にテクノロジーの進化とともに姿を変え、伸びる分野を見つけて成長し続けます。その変化を柔軟に受け止め、おもしろがる人がどんどん増えてほしいと思います。

担当科目

キャリアデザイン

入学直後に始まる基礎教育科目です。入学から卒業までの期間で、どうすれば「ゲームが好き」な学生が「ゲームを仕事にする」ゲームクリエイターになれるのか。ゲーム業界の解説を交えながら、ゲームを作る側の視点や意識を養っていきます。

キャリアデザインの授業風景

ゲームビジネス

「お金って何?」、「会社って何?」など、経済学や経営学の本質にフォーカスした授業です。平林先生の専門分野であるマーケティングについては、例えばどういうPR動画をどのサイトに掲載するとどんな効果が得られるかなど、マーケティングの概念から実務まで幅広くレクチャー。実際に学生たちとゲームアプリの配信プロモーションを行い、大きな成果を上げました。

ゲームビジネスの授業風景

平林久和 先生

【プロフィール】

ゲームアナリスト。株式会社インターラクト代表取締役。公益財団法人日本ゲーム文化振興財団理事。ゲーム産業の黎明期に専門誌の創刊編集者として出版社(現・宝島社)に勤務。1991年にゲーム分野に特化したコンサルティング会社、株式会社インターラクトを設立。現在に至る。著書に『ゲームの大學(共著)』、『ゲーム業界就職読本』、『ゲームの時事問題』など。日本ソフトウェア大賞など審査員歴多数。


◎日本工学院 ゲームクリエイター科四年制/ゲームクリエイター科

https://www.neec.ac.jp/department/design/gamecreator/

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