声優・演劇科2年
青木胡杜音さん(2020年3月現在)
2020年1月20日に開催された「第52回ミス日本コンテスト2020」最終審査において、日本工学院声優・演劇科2年(当時)の青木胡杜音さんが’20 ミス日本ミス着物を受賞しました。ミス日本コンテストは、外見・内面・行動の3つの美を備えた「日本女性の美の最高位」を選ぶコンテストです。青木さんが受賞したミス日本ミス着物は和装が美しい女性に贈られ、受賞者は世界に日本の美しさを発信する役割を担います。この受賞を足がかりに、声優だけでなく女優やモデルにも挑戦したいという青木さんにお話しを聞きました。
私がミス日本コンテストに応募したのは、たまたま学外で交流している方がコンテストの運営者を知っていて、やってみたらと薦められたからです。いろんなことに挑戦しようとしていた時期でしたし、声優のオーディションとは違うので、参加する人たちから何か学べるかもしれないと思いました。1次審査の合格者が約50名で、そこから8月の地区大会を経てファイナリストの13人に残れたときには、夢を見ているようで現実感がありませんでした。そこから最終審査に向けて、約半年間にわたる勉強会のスタートです。毎月4日間、歩き方のレッスンや日本の文化など、さまざまな学びの機会を持てたのは貴重な経験でした。私自身の努力目標は、まず最終審査までに健康的な身体を作ることです。運動と和田式食事法を続けることで筋肉を増やして基礎代謝を上げ、体脂肪率を減らすことに成功。あとは、滑舌を良くするために「外郎(ういろう)売り」という声優・演劇科の授業で習った基礎トレーニングを繰り返しました。「外郎売り」は歌舞伎で演じられる口上なので、一つひとつの言葉がとても難しいんです。でも古い言葉って響きがかっこいいから、声に出していると次第に気持ち良くなるし、自信にも繋がります。声優志望としては、声では負けたくないと思いながら練習を重ねていました。やがて学校の勉強との両立に忙しい思いをしながらファイナリストとしての学びを終えて、最終審査を迎えたのです。
最終審査の質疑応答にそなえて、最近のニュースをチェックしたり、自分がしてきたことや、将来の夢について頭の中の引き出しを整理しておいたので、しっかり答えることができました。ポイントは、話に一貫性をもたせられるようにすること。私の場合は声優やアニメと繋げて話を考えておいたのが功を奏しました。ミス日本のファイナリストに残っただけでも名誉なことですが、ミス着物に選ばれるなんて、思ってもいなかったので本当にうれしかった。日常的に着る機会は少ないのですが着物は大好きです。日舞やお茶のお点前を見て、デザインだけでなく所作がきれいなところに憧れていました。頭をゆらさないように歩いたり、背筋を伸ばしてお辞儀をしたり、着物を着た立ち居振る舞いの美しさは日本文化そのものです。
ミス日本の審査が進んでいく中で、礼儀作法の大切さを学べたことは、とても大きな収穫でした。服装やメイク、人の話を聞く姿勢で第一印象は大きく変わります。コンテストに向けて吉村先生からも、人に好かれるようにがんばりなさいとアドバイスを受けました。自分のためではなく、人のために行動するように心がければ、誰からも好かれて心の底から美しくなれる。確かに、芸能人も老若男女みんなに好かれるなと感じる人は、どこか優しそうな雰囲気をまとっています。美しさを競うコンテストは、内面からにじみ出る魅力の大切さを教えてくれました。
声優をめざすうえで大事なのは、根性です。自分がどんなにがんばっても、上には上がいます。だから、現状に満足しないで常に向上心を持って努力し続けなくてはいけません。私たち学生は、プロの眼から見れば甘い部分がたくさんあります。たとえ厳しいことを言われても、挫折しないでがんばれるだけの根性が必要なのです。私も、人前に出るのが苦手なので、自信をつけるために中学生の頃から自分磨きを意識して、演技の勉強や美容、筋トレに取り組んできました。もちろん、ミス日本への応募も自分磨きの一環です。
最近は声優のアイドル化も進んでいるので、普段から服装がラフ過ぎないように心がけています。どこで業界の関係者が見ているかもしれないのです。きちんとメイクして、自分を引き立ててくれる服を着れば、気持ちも上がるし、もっとチャンスが巡ってくると信じています。
また、学校で習う基礎をしっかり身に付けるべきだと強く感じます。
最近の若い子はなぜ「外郎売り」を覚えていないんだろう、とプロの方が話しているのを耳にしたことがあります。ちゃんと勉強しているな、と思ってもらうためにも、自信をもってチャレンジするためにも、基礎はしっかり身につけたいですね。
私自身、まだ演技力も足りないし、滑舌も甘いところがあります。これからも、尊敬する声優の沢城みゆきさんや、女優の綾瀬はるかさんに一歩でも近づくために、さらに上をめざして努力を続けます。声優も、女優も、モデルも、いろんなジャンルで活躍できる女性になることが夢です。
声優は声や演技で選ばれると思うかもしれませんが、実際は人という要素がかなり大きいんです。大事なのは、この新人を育ててみたい、この子を売り出したい、この人と仕事をしたいと思ってもらうこと。周囲の人々に、好きになってもらえるような立ち居振る舞いをすることです。
青木さんは、そこをきちんと理解できている。どうすれば相手に好印象を与えられるかを常に考えて行動しています。性格や容姿が妨げになって自分にはできないと考える人がいますが、それは勘違いです。意識してやろうとすれば誰にでもできます。もし、初対面の相手が会った瞬間に好印象を持ってくれたら、簡単にはひっくり返りません。でも、マイナスの印象を与えてしまったら、そこから高い評価を得るのは至難の業です。オーディションの場でも、ドアを開けて部屋に入ったところで、ほぼ印象が決まります。表情や雰囲気、服装、髪型など声と関係ないところで採点が始まってしまう。だから、第一印象が良ければ、ファーストステップは勝ちといえるでしょう。
逆にいえば、大切なのは声が良い、お芝居がうまい、ルックスに恵まれているといったことではなく、人としての魅力です。だから、日本工学院の教育は何よりも人間力を大事にします。声優や役者である前に、社会人として恥ずかしくない人間として卒業できるように指導しています。この先、技術が進んでもオーディションの審査を機械がすることはないでしょう。人を選ぶのは人です。どんな仕事に就いても、周囲の人々に好かれて、助けてもらえる人間になれば、きっと成功できます。だから、私たちが新入生に最初に教えるのは、きちんとあいさつをすることなのです。
◎声優・演劇科
https://www.neec.ac.jp/department/creators/actor
日本工学院 クリエイターズカレッジ
声優・演劇科
科長 吉村先生