コンピュータ関連のお仕事④
企業が扱うデータは膨大で、ECサイトやSNSなどを通して、顧客情報などさまざまな情報が各企業のもとに日々集まってきます。それらを適切に管理し、データを有効活用することが多くの企業の課題になっています。その課題を解決するためには、増え続けるデータを整理し、必要な情報を引き出すシステムを構築・運用できる専門家が必要です。それが、データベースエンジニアです。多くの企業でビッグデータを活用した経営戦略が重要視されている昨今、あらゆる情報が企業の資産となります。データ活用のニーズが高まるにつれ、情報を資産に変えるデータベースエンジニアの活躍の場はどんどん広がっています。
めざせる学科
データベースとは、使いやすく整理されたデータの集合体のことです。たくさんの情報(Data)が、1つの土台(Base)で集約・管理できることから「データベース」と名付けられ、「DB」と省略されることもあります。
データベースは、情報を1つの場所に集積したものですが、単に集積しただけではデータベースとはいえません。集積したデータを抽出・編集・共有しやすくすることこそ、データベースの役割です。データベースを使ってデータを管理するメリットには、次のようなものがあります。
データがいくら増えても、データベースサーバ(データを一元管理するコンピュータ)を利用することで、大量のデータをさまざまな形式で保管することができます。
データを管理・検索する際は、DBMS(データベース管理システム)というアプリケーションを介してアクセスするので、目的のデータをスピーディに探すことができます。
目的に応じてデータを呼び出し、加工・編集して、いろいろな用途に使うことができます。
データベースサーバ自体のセキュリティ強化や、データベースへのアクセス権限の管理などにより、データを安全に保管することができます。
大量のデータを整理し、有効利用しやすい形式で保管できるデータベースは、社会のさまざまなシーンで活用されています。
各店舗の在庫状況を一括管理
顧客の氏名や利用状況などを一元管理
診療記録を素早くチェック
コンビニの仕入れ状況や売上情報などを管理
データベースエンジニアとは、データベースに関する専門的な知識や技術を持つ専門家です。データベースの設計や開発などを担い、DBMS(データベース管理システム)も扱います。膨大な情報を企業の経営戦略などに役立てるためには、データベースの活用が不可欠です。データベースエンジニアは、通信ネットワークを通して日々の企業活動でやり取りされるさまざまなデータ(ビッグデータ)を有効活用できるよう、データベースを最適化していきます。
DBMSとは、データベースを管理するためのアプリケーションです。SQLと呼ばれるデータベース言語を使ってデータベースへアクセスします。代表的なDBMSに、オラクル社の「Oracle Database」、マイクロソフト社の「SQL Server」、オープンソースのアプリケーションとして配布されている「MySQL」があります。
データベース言語とは、データベースを操作するための言語です。プログラミング言語のようなコンピュータの動きを指示する言語とは異なり、データベースを加工・編集・管理する場合のみに使われます。データベース言語にはいくつか種類があり、もっともよく利用されているのがSQLです。SQLは、現在主流になっているリレーショナル型のデータベース(データを列と行で表現して表のように管理するデータベース)を操作するための言語です。ISO(国際標準化機構)で規格化されており、Oracle Database、Microsoft SQL Server、MySQLのすべてで使用することができます。
データベースの開発は、アプリケーション開発などと同じように、要件定義、設計、構築、テスト、運用・保守・監視など、いくつかの段階に分かれています。データベースエンジニアは、基本的にそのすべての業務を担い、システムエンジニアやネットワークエンジニアなどと連携しながら、仕事を進めていきます。
基幹系システムのような大きなシステムを作る場合、データベースエンジニアはデータベースを開発し、アプリケーションエンジニアはアプリケーションを開発するなど、ITエンジニアたちが作業を分担しながらシステムを作ります。データベースはさまざまなアプリケーションに利用されるため、設計やテスト段階でアプリケーションエンジニアと連携するなど、さまざまなITエンジニアと協力しながら仕事に当たります。
データベースエンジニアの多くは、SIer(エスアイヤー)やシステム開発会社に所属して、さまざまなシステムのデータベース構築に当たります。SIerとは、Systems Integrator(システムインテグレーター)の頭文字をとった略称で、システム開発の全工程を請け負う受託開発企業をいいます。なお、小規模のシステム開発では、システムエンジニアがデータベース構築を行うため、データベースエンジニアが加わるのは比較的大きなシステム開発の場合です。
データベースエンジニアになるためには、データベースエンジニアとしての基本的な知識とスキルを身につけることが大切です。データベースエンジニアの仕事内容に関連する資格はいくつかあり、それらを取得すれば必要な知識やスキルが効率よく身につくので、資格取得にチャレンジしてみるのもよいでしょう。
膨大なデータを扱うデータベースエンジニアには、データを抽出し、分析するための開発スキルが求められます。開発スキルには、SQLのスキルのほか、MySQLやOracle DatabaseなどのDBMSを扱うスキルも含まれます。すべてのDBMSを扱えなくても、それぞれのDBMSのメリットやデメリットを把握し、ふだんから最新のデータベース技術について知識を深めておくと仕事の幅が広がります。
システム開発の現場はチームで動くことが多いため、コミュニケーションスキルは欠かせません。ユーザーの要望を汲み取り、最適なデータベースを提案する上でも重要なスキルです。データベースエンジニアは、システムエンジニアやアプリケーションエンジニアと共同して作業を進めていくので、相手を理解し、自分の考えをきちんと伝えるためにもコミュニケーションスキルは大切です。
論理的思考力とは、物事を順序立てて考えられる力です。多くのエンジニアに求められる能力ですが、大量のデータを正確に処理するデータベースエンジニアには特に必要な能力です。例えば、データベースの運用段階でトラブルが発生した際には、膨大なデータの中から筋道を立てて原因を究明していく思考力がなければトラブルは解決できません。データベースを構築する際にも、論理的思考力は重要です。
経済産業省が認定する「情報処理技術者試験」の中の一つであり、もっともスタンダードな資格です。ITエンジニアの登竜門的な資格とみなされており、企業の注目度も高く、取得すれば就職活動などで大きなアピール材料になります。日本工学院ITカレッジでもこの資格を重視しております。
「情報処理技術者試験」の中で、上位に位置する「高度試験」の中の一つです。高度なIT人材を認定するための資格であり、データベースやセキュリティ、プロジェクトマネジメントなど分野ごとに試験が分かれているので、取得すれば幅広いスキルが身につきます。
「情報処理技術者試験」の中で、上位に位置する「高度試験」の中の一つです。特定のDBMSに依存しない、データベース共通の理論や設計に関する知識とスキルが問われます。主に実務経験者が知識の整理やスキルアップのために受験することが多い資格です。
オラクル社が認定する世界共通の民間資格です。Oracle Databaseの管理スキルが問われ、合格すれば最新のデータベースやSQLの知識・スキルを備えていることを証明できます。多くの企業に認知されている資格なので、取得すれば就職にも有利です。
データベースエンジニアをめざすなら、日本工学院ITカレッジで学んでみませんか。日本工学院ITカレッジでは、データベースエンジニアになるために最適な学習環境を整え、希望者一人ひとりをプロのデータベースエンジニアに育てています。
特長1
ITスペシャリスト科(4年制)と情報処理科では、1・2年次でデータベースの授業を行っています。目的は、データベースに関する基本的な知識を養うとともに、データベースにアクセスするために必要な言語「SQL」を学び、データベースアプリケーション「MySQL」を操作できるようになること。プログラマやシステムエンジニアであっても、CやJavaなどのプログラミング言語にSQLを埋め込んでデータベースにアクセスするケースがあるため、開発職に共通する必須スキルとしてSQLの習得をめざしています。
特長2
日本工学院ITカレッジのカリキュラムは、学習内容を段階的に明示し、学生一人ひとりの習熟度に合わせて無理なくスキルアップできるように作られています。だから、ITの初学者でも大丈夫。ロボット教材を用いた「IoTものづくり実習」などを通して、ものづくりの感動とITの魅力を味わい、さまざまなITスキルを養っていきます。データベースについても一から教えていきますので安心してください。
特長3
ITスペシャリスト科(4年制)では、3年次以降、チーム開発の実習がスタートします。これは、4〜5人でチームを組み、全員で作業を分担しながらアプリやシステムを開発するというもの。自分たちでスケジュールを組んで進行管理を行い、制作中にトラブルが生じて計画通りに進まないときは、何が問題なのか、どんな対策が有効なのかを全員で話し合いながら進めていきます。実際の開発現場でもチームでシステム開発などを行うため、現場で活かせるコミュニケーションスキルが育まれます。
特長4
産学連携が盛んな日本工学院ITカレッジでは、企業から提供される課題に学生たちが取り組むことも多々あります。2023年、ITスペシャリスト科(4年制)では卒業制作の一環で、データベースのパフォーマンスを上げる企業課題に取り組みました。大量のデータとクオリティの低いSQLを用意し、パフォーマンスの低い問い合わせに対し、SQLをどう組み替えればパフォーマンスが上がるのか。あるいは、データベースをどう加工すれば検索速度が上がるのか─。データベースエンジニアが担う仕事を実際に体験することで、就職後すぐに活かせる実践力が磨かれました。
特長5
日本工学院ITカレッジでは、学生自身がキャリアを描き、希望する就職を実現できるように『キャリアデザイン』などの就職系科目をカリキュラムに組み込み、一人ひとりの就職をしっかりサポートしています。IT業界とのネットワークを生かした企業研究や業界研究なども、進路を決める際の大きな指針になっています。また、就職サポートの専門機関であるキャリアサポートセンターにも、めざす業界・企業に就職するための膨大な就職ノウハウが蓄積されており、多くの学生がこれらを活用し、希望する企業に就職しています。
ITスペシャリスト科(4年制)科長(八王子校)
ネットワークセキュリティ科 科長(八王子校)
田嶋 益光 先生
【プロフィール】
日本工学院情報処理科を卒業後、約15年間、ソフトウェア開発会社などで、プログラマ、システムエンジニア、サーバエンジニアとして活躍。大手通信会社の社内システムや、証券業界・金融業界のシステム構築に携わる。著書に『基本情報技術者 表計算 とっておきの解法』がある。
データベースエンジニアをめざす人がいまできること
データベースのプロフェッショナルをめざすなら、データベースって何なのかを自分なりに調べてほしいと思います。そして、世の中のどこに使われているのか、探してみてください。データベースを使わないシステムを探す方がたいへんなぐらい、日常生活のさまざまなシーンでデータベースは活用されています。日頃から意識しておくと、データベースが身近なものに感じられると思います。
データベースエンジニアをめざすみなさんへ
以前、私が証券のトレーディングシステムの開発に携わった際、自分なりにデータベースを深く学んで、データベースの機能を新しくしたことがあります。当初はうまくいきませんでしたが、技術的な改善点を提案したら、パフォーマンスが大きく向上しました。そのときはお客様にとても喜んでいただき、仕事に対するモチベーションも上がり、知識や技術を身につけてきて本当によかったと実感しました。自分の技術力でシステムの性能が変わる、技術力を磨けばシステムの性能を「変えられる」ということは、エンジニアとしての大きなやりがいです。ぜひみなさんもデータベースエンジニアをめざしてがんばってください。