情報ビジネス科
「MONIN(モナン)」を活用するノンアルコールカ...
2024/11/22
日本工学院八王子専門学校で、かれこれ十数年にわたってITを教えてきた大滝みや子先生。学内ではクラス担任でありながら、学外では”合格の女神様”として試験対策の分野ではつとに有名な存在です。そんな大滝先生が語る「資格論」には、資格取得のコツのみならず、日常生活をどう送るべきかが示されています。かつてIT業界でプロジェクトリーダーを務めた先生が解く、小手先ではない「現場感覚の資格論」とは───。
将来、IT業界に就職したい人、ITの資格取得をめざす人が抱く疑問にすべて答えていただきました。
IT企業で地球科学分野を中心としたソフトウェア開発に従事した後、日本工学院八王子専門学校の教員に。現在、ITスペシャリスト科システム専攻のクラス担任を務め、C言語、データベース、情報理論、および情報処理技術者試験などの資格対策科目を担当。平成10年(1998年)より試験対策テキストの執筆を始め、そのわかりやすさと合格率の高さから、学研の試験対策誌『月刊 合格情報処理』(現在休刊中)で、「合格の女神様」と称されるようになった。大滝先生のクラスでもこれまで延べ200名以上が情報処理技術者試験に合格。その合格率は全国平均を大きく上回り、数多くの卒業生が資格を手にIT業界で活躍中。「応用情報技術者 合格教本」「応用情報技術者 試験によくでる問題集【午前】」「要点早わかり 応用情報技術者 ポケット攻略本」(以上、技術評論社)「基本情報技術者 スピードアンサー338」(翔泳社)「基本情報技術者 かんたんアルゴリズム解法―流れ図と擬似言語」(リックテレコム)「基本情報技術者 午前の集中学習」「基本情報技術者 午後の集中学習」(以上,オーム社)「基本情報 SQLドリル」「基本情報+ITパスポート 計算ドリル」(以上、実教出版)ほかこれまでの著作は70 冊以上。 好きなアーティストは、フレディ・マーキュリー(Queen)、マイケル・ジャクソン、キミ・ライコネン(F1ドライバー)。趣味は、海外旅行とF1観戦。
採用選考の際に資格をどう見ているか
二宮:次は、資格と評価(昇級・昇格)の関係についてです。当社では、目標管理の観点から、社員に目標資格を半年単位で設定しています。実は、このことはコミュニケーションのきっかけとしても効果的なのです。「どう、資格の勉強進んでる?」「○○のところでつまずいてます」などと、コミュニケーションを図ることができます。IT業界ではほとんどの人がパソコンに向かって仕事をしているので、隣の席の人が何をしているかわからないということもしばしばです。だからこそ、コミュニケーションが大事でお互いが会話する機会として有効です。
資格と評価に関してもっとも重要なのは、人事評価を”見える化する”ことだと思います。これは私自身にとっても永遠のテーマです。全員が同じものを作っているのなら評価は容易ですが、それぞれが異なる仕事をしているため評価は非常に難しいです。
従って、コミュニケーションをとる中で、相手の成長度合い、課題点等を明確にできるようになりますので、資格への取り組みもその一つの重要な情報源になります。
以上のことから、当社にとって資格が単なる昇格のための判断基準ではなく、人財育成の観点から重視しているということがわかっていただけると思います。
資格は昇格や昇給にどう影響するか
二宮:資格と採用選考の関係についてお話します。資格があれば必ず採用されるかというと、そうとは限りません。でも、資格があれば有利なのは間違いありません。本人の努力を客観的に評価できるからです。
当社では、学歴よりも専門性や適性を重視しています。また、問題解決能力、ストレス耐性、ヴァイタリティ(熱意)を特に重視しています。資格を取るには適性や熱意が欠かせないと私たちは考えていて、それはIT技術に関する熱意や新技術習得への向上心につながると思っています。さらに、資格の勉強を積む過程で、学習に集中すること、楽しむことができるようになります。仕事も同様に集中し楽しむことが肝心なので、日頃の業務にも活きてきます。
採用選考に関して最近思うことは、情報系大学各学部の専門性(即戦力としての力)が低くなっていることです。その意味では、資格を取って専門性を高めればアドバンテージになります。また、学生の安定志向も強まっています。よく勘違いされるのですが、成長してこそ企業は安定するのです。いま安定していても将来にわたって安定し続けるとは限りません。ここはすごく大事なポイントです。
資格は人財育成のための重要なツール
二宮:最後は、資格と人財育成の関係についてです。自ら壁を乗り越えて資格を手にする経験を通じて、満足感と達成感が得られます。これはみなさんも実感したことがあるでしょう。それに加え、働きながら資格を取ることで時間管理能力が向上します。みんなが同じように忙しい中で、合格する人と不合格の人がいる。入社5年目ぐらいまでにこの時間管理能力を身につけることがとても重要だと思っています。 また、資格取得という具体的な目標を持つことで、自分の将来像をイメージすることができ、モチベーションの向上・維持につながります。目標とする資格を絶対取ろうと思ったら、仕事に対しても高い意識で取り組めるようになると思います。 さらに、新人教育の講師は先輩社員が行うので、資格は人を育てる風土作りにも役立ちます。みなさんも他人に教えたことがあるでしょう。すごく難しいですよね、コミュニケーション能力も必要になるので。
応用情報技術者試験は入社5年以内に合格を
二宮:なぜ当社が資格取得をすすめるか、わかっていただけたと思います。では、具体的にどのような目安で資格取得を支援しているのか。まず、基本情報技術者試験については、入社後1年以内の合格を目標にしていると前回言いましたが、どんなに遅くとも入社後3年以内には合格しないといけません。応用情報技術者試験は入社後5年以内の合格を目標にしています。
また、資格は学生の時にだけ取ればいいというものではありません。IT業界では社会人こそ資格取得が重要だと思ってください。IT業界は、技術革新や環境変化が早い世界です。いま持っている能力も簡単に陳腐化します。だから、学び続けることはとても大切なのです。
特別講師を務めた日立INSソフトウェア(株)の二宮さん
成果=モチベーション×能力×環境要因
二宮:自己啓発は強要できません。学習はつらく厳しいものです。でも、資格取得に取り組めば、さまざまな効果が期待できます。
まず、当たり前のことが「当たり前」にできるようになります。大切なことほど「当たり前」です。でも、これを指導することは困難です。では私たち企業に何ができるかというと、環境とモチベーションなら提供できます。そのために私たちはさまざまな施策を実施しているのです。
次に、資格取得を通して、人間として成長できます。最初から自立した人はいません。誰もが人とのつながりを通して成長していくのです。資格はコミュニケーションを活性化させる上でも有効なツールなのです。
ちなみに、成果をあげるためには、 高いモチベーションと適切な能力、そして、それを発揮できる環境が必要だと言われています。当社は資格取得を通じ、モチベーションとその環境を整えられると考えています。皆さんは能力を高めることに全力を注いで下さい。必ず確かな成果が得られると思います。
成果を上げるには地道な努力こそが正攻法
二宮:最後に、人事部門から見た人財育成のジレンマについてお話します。どうすれば強みを持った人財を育成できるのか…、そこにはいわゆる「必殺技」がありません。地道に努力するしかないのです。
また、ハイパフォーマーは短期的には育成できません。さまざまな環境が積み重なって育成されるものです。このハイパフォーマーには共通する特長があります。①ゴールのイメージが明確である、②ゴールまでに横たわる阻害要因を推測できる、③それを内省する能力が高い、の3つです。これは資格に限ったことではありません。何についても言えることです。私自身もそうありたいと思っています。
長くなりましたが、私からの説明は以上です。みなさんがこれから活躍する上で少しでもお役に立てればうれしいです。ありがとうございました。
資格が及ぼすさまざまな効果
Q : 会社で独立を目指している方はどれ位いますか?
二宮:私は一生共に働く仲間だと思っていますが、正直どれ位いるかわかりません。それを把握する仕組みがないのです。ただ、離職率ということでは当社は数%程度です。IT業界全体としては、もう少し離職率は高いと思います。
Q : 資格の勉強は何から始めればいいのでしょうか?
大滝:この情報処理技術者試験の対策テキスト、2冊プレゼントします。勉強は几帳面にテキストの1ページ目から始めるんじゃなく、好きな章から始めてかまいません。この本に何が書いてあるか、最初はわからないと思いますから、パラパラとめくって好きなところから勉強してください。ITっていろんな内容がつながっているので、ここがわかってもこっちがわからない、という箇所がいくつも出てくるんですよ。ということは、どこから始めたっていいんです。そして難しい箇所に当たったら、確実に自分のものにしてから次に進んでください。最初は1問だけでいいです。直面する問題を確実に自分のものにすると、それが自信になります。最初はゆっくりでいいですから、一つひとつ深めていけばいいと思いますよ。
二宮:当社で社員に話しているのは、一日5分でも1分でもいいから、資格の勉強をやろうよと。間が空くとよくないです。毎日3分やるだけで相当違うと思いますよ。そのうち、気づいたら3分が30分になっていると思います。
大滝:そう。そのためには絶対テキストから離れないことが大切です。テレビを観るときも側にテキストを置いておくといいですよ(笑)。見える所に置いていないと、好きな番組を見終わった時、すぐに勉強に入れないでしょ。近くにあればすぐ勉強に入れますし、入らなきゃいけないという気持ちになってきますよ。
Q : 就職してから伸びる人とそうでない人の違いって何ですか?
二宮:私の感覚ですが、入社5年目ぐらいまでの時間の使い方ですね。仕事と生活のバランスを適度に取ることは大切です。でも、実は人ってそれほど能力に差がなくて、8時間100%で頑張る人と10時間100%で頑張る人を比べたら、5年間で見ると間違いなく10時間頑張った人が上になるんですね。だから、若いうちは効率よりもがむしゃらに頑張ることが成長につながると思います。その中で次第に自分の個性もわかってきます。自分はコミュニケーションが苦手だなとか、技術面が苦手だなとか。そこを少しずつ改善していくといいと思います。ただし、人間関係が苦手だなと思ったら、無理して直そうとしない方がいい。自分の短所を知ることや、その改善はとても大切なことですが、「短所」は簡単には直らないものだと思います。だったら長所を伸ばすことで短所をカバーした方がいいです。会社は一人ではありません。グループで活動する時は誰かの短所は他の誰かの長所で間違いなく補えます。短所を一生懸命直そうとすると心もつらくなってきます。長所を1日10時間伸ばしていけば、将来は間違いなくエースになると思いますよ。
Q : 面接試験のコツって何ですか?
二宮:さきほど、私たちは問題解決能力、ストレス耐性、ヴァイタリティ(熱意)を重視しているとお話しましたが、ではなぜ重視しているかというと、これらは入社してから育てるのが難しいからです。ブレゼン能力や技術力は教えれば向上しますけどね。では、プレッシャー耐性を見るために面接試験でどんな質問をするかというと、例えば面接当日の日経新聞朝刊の右側のページを読みましたかと聞く。学生が絶対予期していない質問をするんです。その時、もたもたする人がいる。黙っちゃう人もいる。読んでもいないのに読んだと言っちゃう人もいる(笑)。その時の対応でプレッシャー耐性が強いかどうかを見ているわけですね。突発的なことが起きたときにどんな反応をするのか。逆に言えば、面接試験のコツは面接官が何を重視しているかを理解しておくことと言えるかもしれません。
大滝:(質問した学生に向かって)そもそも面接試験のコツなんて勉強しちゃダメ。だって、いくらコツを勉強したって、入社したらすぐにばれるんだから(笑)。裸で入社するんですよ。嘘をまとってもいずれ剥がされるから。だから、いまスキルを身につけるしかないの。人間力をつければいいだけの話ですよ。人間ができていれば、突拍子のない質問が来ても何とかなる。面接試験は準備すればなんとかなると思っているから、失敗するの。準備するものじゃない、自分から見せに行くものなの。ありのままの自分を見てもらいに行くだけだからね。
学生たちの質問に真剣に答える大滝先生
コミュニケーション能力の高め方
二宮:コミュニケーション能力を高めるコツは、いままで話したことのない人たちとたくさん話すこと。いまの若い人は自分たちのコミュニティだけで話しているから、年上の人、あるいは極端に年下の人と話すことが苦手という人が多い。でも、会社に入ったら上司は選べません。苦手と言っていられない。それを克服するには、普段からいろんな人たちと積極的に話すといいです。例えば学食で配膳の方に「今日何が売れているんですか」と聞くだけで全然違います。私は企業説明会などで大学に伺うと必ず学食に行ってご飯を食べるんです。すると、その大学の雰囲気がなんとなくわかるんですよ。靴と玄関を見ればその家がわかる感じと似ています。面接試験も一緒で、話していると相手のことがなんとなくわかってくる。肌の感覚というか、この人と働きたいなと思えてくるんです。
目標を立てることの大切さ
大滝:とにかく4年間(ITスペシャリスト科は4年制)なんてあっという間なので、二宮さんのお話にもあったように、ゴールを見据えて勉強することが重要です。目標を明確にしておかないと、絶対にそこまで到達できません。私はF1が好きなので、時間さえあればF1を観にいきます。何年か前、富士スピードウェイに行った帰りのことです。私の乗るバスは「河口湖行き」なのですが、バスの列が長すぎて目的地(河口湖行き)の看板が見えず、とりあえずどこ行きかわからない列に延々と4時間並んだことがあります。あのときは、精神的にすごくつらかったです。それって目標がないのと同じ状態なんですね。いくら列が長くても、「これは河口湖行きなんだ」とわかっていれば精神的にもきつくないですし、我慢できます。それと同じように、仕事や勉強もゴールが見えていればやりきることができますが、見えていないと途中であきらめたくなるんですよ。
これからIT業界をめざす若者へ
二宮:IT業界は、やれクラウドだ、やれビッグデータだなどと注目されていますが、取り組むべき課題はまだまだたくさんあります。日本企業にとっては利益率も課題の一つです。みなさんは海外企業の利益率ってどれ位か知っていますか。海外で注目されている企業の多くは10%以上で、さらに10%増やして20%にしようという目標を立てています。すなわち、100円のうち20円が利益ということです。それに対して日本の企業は3〜5%程度の企業が多くあります。日本の企業がグローバル化するということは、そういう会社とこれから闘っていくということです。厳しい闘いですが、ものづくり大国ニッポンの良さを発揮していけば、充分に勝てると私は思っています。みなさんもいまのうちにしっかりと自分の長所を伸ばすことに集中してください。期待しています。頑張ってくださいね。
資格取得のために一番大切なこと
大滝:もっとも大事なのは、「やらなきゃいけない」という気持ちではなく、「やりたい」という気持ちになること。朝起きてお腹が空いていないのに「何か食べなきゃ」と思う状態だと困るんです。そうじゃなくて「食べたい!」と思えるようにならないと。そう思わないと、同じものを食べても美味しくないでしょ。資格も同じで、合格したいと思わないとダメ。その上で、わからない問題に当たったら徹底的に調べて、どうしてもわからなかったら放っておく。気になるなら、そのページを破いて捨ててもいいです。とにかく、楽しんで勉強すること。絶対に合格したいという気持ちを忘れないこと。じゃないと、つらいだけになってしまうから。
セミナーに参加した高校生へのアドバイス
大滝:高校在学中にITパスポート試験を受けるなら、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)というサイトにアクセスして、過去問題に当たるといいですよ。平成16〜23年までの問題がありますから(平成20年までは「初級システムアドミニストレータ試験」という名称)。あまり古い問題はやらなくてもいいですけどね。計算問題やアルゴリズムも除いてかまいません。本校には資格特待生制度があるので、ITパスポート試験に合格すれば、入学時に10万円ゲットできます。とにかく、絶対途中であきらめないでくださいね。あきらめグセがつきますから。一度目標を設定したら、どんなに小さな目標でもあきらめちゃダメです。わからないことがあったら、本校にスクーリングに来るといいですよ。頑張ってくださいね。
それでは、今日のセミナーはこれで終了します。ありがとうございました。
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