人工知能(AI)は、日進月歩で成長を続けている技術です。社会やビジネスに対する影響も大きく、AIの市場規模は膨らみ続けています。AI人材を求める企業も産業界全体に広がっており、今後人材不足は深刻化すると予測されています。AIに関連する仕事をめざすうえで、AIの市場規模、活用事例、AI人材のニーズや年収など、AIを取り巻く環境について知っておくことはとても重要ですので、正しく理解し、AIを社会やビジネスに役立てていってください。
人工知能(AI)とは、人間の知的活動をコンピュータを使って人工的に再現したものであり、次世代の社会を支える主要技術のひとつ。プログラミングとデータ解析を組み合わせて新しい価値を創造する、とても重要なクリエイティブツールです。AIを使いこなすには発想力やビジネス感覚が不可欠ですが、それらを身につければ無限の価値を創り出すことができます。事実、日々AIを使った新たなサービスが生まれており、ベンリで快適な暮らしを支えています。
AIには、できること(得意なこと)とできないこと(苦手なこと)があります。得意なことは、大量のデータ処理、ルールに沿った作業、共通点を見つける作業など。こうしたAIの特徴を理解しておくと、課題を解決する際、より効率的にAIを活用することができます。
音声認識・応答
AIが音声を理解して会話する
文章認識
書かれた文章を理解し翻訳や要約を行う
画像認識
何の画像なのかを判別する
推論
過去の知識をもとにして新たな解答を見つける
機械制御
機械を制御し正確で高速な作業を実現する
AIは社会の隅々に溶けこみ、人々は日常の中で意識せずにAIを使いこなしています。いまやAIは一部の研究者が扱う特別な技術ではなく、誰もが楽しみながら活用している身近な技術。特に最近はAIを使った新しいシステムやサービスがどんどん実現しており、社会全体に新たな息吹を吹き込んでいます。
生活
AIが育児をサポート。
赤ちゃんの泣き声を分析し、育児を楽に!
AIが赤ちゃんの泣き声から「おなかが空いた」「眠たい」「不快」など5つの感情に分類し、泣いている理由を可視化して知らせます。
交通
AIが雪かき。道路の積雪量などから
除雪車の出動を指示!
AIが街の定点カメラから道路脇の積雪量や道幅の変化を把握し、基準を超えたらAIが出動を指示します。
自動運転
AIで自動運転クルーズ。
小型旅客船の自動運航が可能に!
AIが周囲の船や風向きなどのデータを分析し、船のスピードや方向をレバーで制御して自動航路を作成。無人島への航行に成功しています。
福祉
AIでコミュニケーション。
ARとAIで視覚障害者をサポート!
視覚障害のある人がカメラ付きのスマートグラスを装着すると、AIが周囲を検知し、人や障害物を音声でお知らせ。街中で知り合いがいても見つけてくれます。
農業
AIが野菜の収穫をサポート。
一番おいしくなる収穫時期を予測!
スマートフォンなどで撮影した野菜の写真をもとに、画像解析AIが葉の枚数と気象予測データから野菜の最適な収穫日を予測します。
2020年度のAI市場の売上金額は約513億円、前年度比19.9%増と大きな伸びを記録しました。その傾向は今後も継続し、国内のAI市場の年平均成長率(2020〜2025年度)は18.7%、2025年度には1,200億円に達すると予測されており、AIのスペシャリストの活躍の場はどんどん広がっています。
■国内のAI市場(推移と予測)
※出典:ITR「ITR Market View:AI市場2021」
経済産業省の調査によると、AI人材(AIエンジニアやAIプランナーなど)は、2030年に12万人以上不足すると予想されています。AIの普及に伴い、将来は一般企業でもAIユーザー(AIを使ったシステムやアプリを適切に活用できる人)が増加すると見込まれているため、より多くのAI関連人材が必要になると考えられます。
■AI人材全体の需給
※出典:経済産業省「IT人材の需給に関する調査」
日本は世界的に見てユーザー企業(IT業界以外の企業)で働くIT人材の割合が低いと指摘されています。事実、IT企業とユーザー企業で働くIT人材の割合をみると、日本はIT企業で働くIT人材の割合が約72%に対しユーザー企業が約28%、アメリカはIT企業が約35%に対しユーザー企業が約65%に達しています。イギリスやドイツでもユーザー企業の比率が5割を超えており、これからの日本ではIT人材の活躍の場がユーザー企業へと広がっていくことが予想されます。。
■IT人材が所属する企業の割合
※出典:IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)「IT人材白書2017」
経済産業省の調査によれば、AIなどの先端的なIT業務に携わる人(デジタル人材)の年収は、個人差はあるものの「1,000〜1,500万円」の区分がもっとも多くなっています。海外のITベンダーの場合、デジタル人材には数千万円の年俸が保証されることもあります。
■デジタル人材の年収分布
※出典:経済産業省「我が国におけるIT人材の動向」
日本政府は「Society 5.0」の実現に向けて、さまざまな取り組みを行っています。「Society 5.0」とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させ、経済的な発展と社会的な課題の解決を両立する「人間中心の社会」。産業・社会の基盤作りと並行して、全国民がAIやデータサイエンスの基礎を学び、AIで地域課題の解決ができる人材の育成などをめざしています。
また、産業界にはDX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を活用することで人々の生活をより良いものへと変革すること)の推進が求められており、多くの企業でDX人材(業務のDX化に取り組む人)の育成や確保が課題となっています。
■AI人材の育成
※出典:文部科学省「AI戦略等を踏まえたAI人材の育成について」
AIを使ったシステムを企画・開発する技術系の職種と、AIを活用しDXの推進も担う活用系の職種に分かれます。技術職の多くはIT企業に所属していますが、ユーザー企業(IT業界以外の一般企業)からのニーズも高まっています。一方、活用系の職種は業界を問わず広く求められており、デジタル社会の進展とともにAI関連人材の活躍の場は広がっています。
活用系
社内AIエンジニア
AIを活用して業務をデジタル化する人です。AIシステムの企画立案や推進を担います。
技術系
AIエンジニア
AIを開発し、データを分析する技術者です。AIの専門知識や技術を活用してAIシステムを開発し、企業や地域が抱えている課題解決に取り組みます。
技術系
データサイエンティスト
ビジネス上の課題を洗い出し、課題解決に必要なデータを収集・分析。分析結果をもとに企業に改善案を提案し、新たなビジネスモデルを構築する仕事です。
技術系
IoTエンジニア
IoTに関わる製品や技術のシステムを開発する技術者です。プログラミングだけでなく、製品の企画や設計を担うことが多い職種です。
AIシステム科へ
日本工学院AIシステム科では、テクノロジー(クラウド、Web、IoT)、クリエイティビティ(発想力)、ビジネス(実践力)の3つのカテゴリーを重点的に学び、AIエンジニアをはじめとするAI開発・AI活用のスペシャリストを育成しています。