AI(人工知能)は、人間の知的活動をコンピュータで人工的に再現したシステムです。人間の知能は限りなく複雑であるため、それを再現・模倣するAIにもさまざまな技術が使われています。AIの研究は1950年代から続いていますが、機械学習が実用化されディープラーニングが登場した2000年代以降、AIを取り巻く環境が急速に進歩しています。AIの開発も一からプログラムするのではなく、クラウドサービスなどの開発環境を使って、誰もが簡単にAIを開発・活用できる時代を迎えています。
AI(人工知能)とは、認識や理解、学習や判断などの知的活動を人工的に再現する技術です。その概要や主な技術を、7つの知的活動に分けて紹介します。
AIは、特徴(パターン)をもとに対象物を認識します。
コンピュータの「認識」とは、データの中から一定の特徴や規則性のパターンを識別して取り出す「パターン認識」処理をいいます。認識技術には「文字認識」や「顔認識」などがあります。データ構造で分類すると「画像認識」「映像認識」「音声認識」などに分かれます。
■認識対象(画像認識の例)
日本工学院AIシステム科では
「認識」について学び、実際に文字認識、画像認識、音声認識などのシステムを開発します。
【関連科目】AIリテラシー概論、IoT活用実習、AIビジネス戦略 など
AIは、周囲の単語や文脈から意味を「理解」します。
文章における単語の意味は周囲の単語や文脈などに依存し、コンピュータがこれらを考慮した応答ができれば、意味を「理解」しているとみなすことができます。このような意味の理解に関する代表的な技術が「分散表現」です。分散表現とは、単語が出現する周辺の単語の情報を使って、単語の特徴を多次元のベクトルに置き換える手法です。分散表現の代表的な求め方に、大量の例文データを使い、ニューラルネットワーク(脳の神経回路の一部を模した数理モデル)に分散表現を学習させる手法があります(下図)。
■分散表現
牛が道路を横断している。自動車は停止している。遠くには山が見える。天気は晴れだが雲が多い。
晴天の間に牧場に移すため、牛が道路を横断している。そのため道路の行く手を阻まれ、自動車は停止している。
Q.自動車に乗っている人はなぜ不機嫌なのか?
晴天の間に牧場に移すため、牛が道路を横断している。そのため道路の行く手を阻まれている。それにより牛はゆっくりとしか移動しないため、急いでいるから困る。
日本工学院AIシステム科では
「理解」とは何かを学び、ニューラルネットワークについて理解します。
【関連科目】AIリテラシー概論、クラウド技術基礎、AIプログラミング基礎 など
機械学習には、教師あり学習、教師なし学習、強化学習の3タイプがあります。
コンピュータにおける「学習」とは、機械学習を指します。機械学習とは、コンピュータがデータをもとに自動的に反復学習し、データのルールやパターンを見つけ出す技術です。機械学習には「学習」と「推論」の2つのプロセスがあり、それぞれ異なるデータを使用します。
「学習」とは、事前に与えられたデータ(学習データ)をもとにモデルを作ることをいいます。学習が終わったモデル(学習済みモデル)には、学習データの統計的な傾向や規則性が反映されています。「推論」とは、集めたデータをもとに学習済みモデルを使って判定などを行うことをいいます。正確な推論を行うためには、学習時にデータから過不足のない特徴を抽出し、モデルを作る必要があります。有用な学習モデルを作るための方法として「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つがあります。。
■機械学習の手法
●教師あり学習
学習データに正解ラベルの付いたデータを使って学習モデルを作る手法です。例えば犬と猫を認識させるために、犬と猫のラベルの付いた教師データを使って教師あり学習を行います。学習後は、未知の画像が犬と猫のどちらであるか、どちらにより近いかを推論できるようになります。
●教師なし学習
正解ラベルの付いていない学習データから、データに含まれる特徴(構造や規則性など)を見つけ出す方法です。正解ラベルの付いていない大量のデータに対して、その中から何らかの特徴を見つけてグループ分け(クラスタリング)する際などによく使われる手法です。
●強化学習
選択結果に応じて報酬(評価)を与えることで、どの行動を選択すべきなのかを学習させる方法です。例えば、犬のしつけでお手をした場合にのみ餌を与えれば、犬は「お手をする→餌がもらえる」ことを学習します。ロボットの動作学習などに使われています。
日本工学院AIシステム科では
教師あり学習、教師なし学習、強化学習の違いを学び、実際にAIを活用したサービスを作ります。
【関連科目】AIリテラシー概論、機械学習基礎、AIプログラミング実習 など
ディープラーニングが可能にした、AI自身による判断。
「判断」とは、複雑な制約がある中で意思決定することです。正しい意思決定を行うためには、できるだけ多くの判断材料を集め、分析しなければなりません。例えばインターネットなどで大量の情報を集め、AIに判断材料を提示させれば、意志決定に役立ちます。また、自動運転車のように、AI自身に判断を行わせるケースもあります。AI自身に判断を行わせる際、ディープラーニングの技術を使えば、膨大なデータを読み込み、適切な解を得られる精度が高まります。ただし、ディープラーニングによる判断は仕組み上、根拠を説明することが難しいため、運用の際は注意が必要です。
■AIによる判断(ディープラーニング)
日本工学院AIシステム科では
「判断」の仕組みを学び、エキスパートシステムや決定木分析などの手法を実習します。
【関連科目】AIリテラシー概論、機械学習基礎など
AIは、過去のデータを分析して未来を予測します。
「予測」とは、過去のデータから数学モデルなどを使って未来のデータを求める処理をいいます。例えば、市場動向や在庫状況などのデータを分析し、今後の販売数や需要の変化を分析することが可能です。AIによる予測は、アルゴリズムと呼ばれる分析の手順・ルールに従ってデータ処理を行います。アルゴリズムには多くのパターンがあり、多様なタイプの分析を行うことが可能です。
■AIによる予測の例
日本工学院AIシステム科では
回帰分析やクラスタリングなど、さまざまな分析手法について実践を通して学びます。
【関連科目】データ分析基礎、データ分析 など
AIは、自然言語処理の技術で言葉を「理解」します。
スマートフォンのAIアシスタントに代表されるように、人間の言語で機械を操作することが当たり前の時代になっています。その背景にあるのが「自然言語処理」と呼ばれる技術です。自然言語処理とは、コンピュータで自然言語(日常的に私たちが使う話し言葉や書き言葉)を解析し、処理するための技術です。この技術を使うことで「機械翻訳」(コンピュータで言語を別の言語に変換すること)、「音声対話システム」(質問に対する回答を音声データに変換して答えるシステム)、「予測変換機能」(単語のはじめの数文字を打つと候補を表示してくれる機能)などが可能になります。
■自然言語処理の例
日本工学院AIシステム科では
自然言語処理について学び、基礎的な処理をプログラミング言語「Python」を使って実装します。
【関連科目】AIリテラシー概論、IoT活用実習、AIプログラミング実習 など
AIがこれまでのアート作品を学習して、新たな作品を創造することも可能。
ディープラーニング技術は、架空の画像など、これまで存在していなかったデータの生成にも利用できます。一般に「生成モデル」と呼ばれるモデルを使うことで、AI技術による創作が可能になっています。代表的な生成技術に変分オートエンコーダー(VAE)や敵対的生成ネットワーク(GAN)があります。GANは、偽物を作り出す「生成器」と、本物かどうかを見分ける「識別器」をネットワークに組み込み、競争させるような形で学習させます。この学習を何度もくり返せば、本物に近い偽物ができあがります。ディープフェイク(写真の中の人物をまったく別の人物にすり替えてしまうような技術)にもGANは使われおり、倫理的な運用が課題になっています
■GAN(敵対的生成ネットワーク)の仕組み
日本工学院AIシステム科では
ニューラルネットワークとディープラーニングの基本について学びます。
【関連科目】AIリテラシー概論、AIプログラミング基礎、クラウド技術基礎 など
ディープラーニングは、機械学習の一つの手法です。
AI(人工知能)とは、人間の脳の認知や判断などの機能を、人間の脳の仕組みとは異なる仕組みで実現する技術です。人間が自然に行っている思考や行動を、アルゴリズムや数値などに置き換えることで、機械が自動的に実行することを目指します。
機械学習は、AIの中の一つのカテゴリーです。データから規則性や判断基準を学習し、それに基づいて未知のものを予測・判断する技術です。
ディープラーニングは、機械学習の手法の一つです。人間の脳のニューロンを模した「ニューラルネットワーク」を使い、コンピュータ自身が特徴を探して学習を行います。
AIアプリ開発には、フレームワークやプラットフォームが重要!
機械学習を利用する場合、画像認識や機械翻訳などのアプリケーションを利用することになります。このようなアプリケーションは、プロセッサー、フレームワーク、プラットフォームの3層の基盤で開発されます。
プロセッサーとは、計算処理などを行うハードウェアです。もともと3Dのコンピュータゲームに使われてきたGPU(Graphics Processing Unit)が、機械学習におけるプロセッサーとして広く使われています。
フレームワークとは、機械学習のための機能やアルゴリズムを提供するものです。その中から必要なものを組み合わせてプログラムを作ることで、アプリケーション開発することができます。フレームワークはさまざまなIT企業などからオープンソースで提供されています。
プラットフォームとは、プロセッサーによる計算能力とフレームワークなどをセットにして、アプリケーションを開発する環境を提供するものです。プラットフォームは、通常クラウドサービスの形で提供されます。単にフレームワークを使ってアプリケーションを開発する場合と比べ、クラウド経由で提供事業者の計算能力が活用できるといったメリットがあります。
■機械学習におけるレイヤー構造
日本工学院AIシステム科では
クラウドサービス「Google Cloud」を授業に導入!
機械学習の分野では、昔から技術が積み上げられてきていて、それが関数やコマンドとしてまとめられています。それが「フレームワーク」であり、どのフレームワークを使うかが機械学習における重要なポイントになっています。フレームワークの中で、もっとも人気が高いものが、GmailやGoogle翻訳などに使われているGoogleの「TensorFlow」です。日本工学院AIシステム科では、このTensorFlowを授業に採り入れています。
また、「プラットフォーム」は低コストで小規模での開発を可能にすることから、企業におけるAI開発に欠かせない存在になっています。プラットフォームには、「Google Cloud」(Google)やAWS(Amazon)などがあり、ほとんどが各社のクラウドサービスに内包されて提供されています。日本工学院AIシステム科では、Googleのクラウドサービス「Google Cloud」を授業に導入し、クラウドの最新スキルを実践的に学習。その他「Amazon Web Services」や「Microsoft Azure」などのクラウドサービスについても幅広く学びます。
※このページは、IPA「DX白書2021」、総務省「情報通信白書」をもとに編集したものです。
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日本工学院AIシステム科では、テクノロジー(クラウド、Web、IoT)、クリエイティビティ(発想力)、ビジネス(実践力)の3つのカテゴリーを重点的に学び、AIエンジニアをはじめとするAI開発・AI活用のスペシャリストを育成しています。